日本初の心尖部アプローチによる経カテーテル逆流孔閉鎖術
国立循環器病研究センターは3月22日、小林順二郎副院長のチームが3月14日に僧帽弁置換術後弁周囲逆流(PVL)に対する経カテーテル逆流孔閉鎖術に成功したと発表した。心尖部アプローチによる成功は国内初。
画像はリリースより
僧帽弁置換術後PVLは、人工弁置換術後の5~17%に生じるといわれており、溶血、心不全を引きおこす場合がある。標準治療は外科的再手術であるが、2回目の開胸手術の死亡率は10%近く、基礎にある組織脆弱性、炎症、または石灰化のために再発する可能性も高いのが現状だ。
このため、溶血や心不全といった症候性のPVLのうち、欠損孔の形態が現在使用可能なデバイス留置に適している症例であり、高齢や頻回の手術など外科的修復術がハイリスクである場合、経カテーテル逆流孔閉鎖術を考慮することがガイドラインとして示されている。 海外では、「AMPLATZERバスキュラープラグII」を使用した経カテーテル逆流孔閉鎖術が広く行われているが、日本では、これまで心房中隔からのアプローチによる経カテーテル逆流孔閉鎖術が数件行われていたものの、操作性が悪く手術時間が4時間前後と長くなるという問題があった。
約2時間の手術でPVLが高度から軽度に改善
今回、この治療法を実施したのは、過去3回の開心術を経験した70代男性。他院でPVLに対する再手術(開心術)を行ったが、再発により同センターを受診したという。同センターのハートチームは、心尖部アプローチによる経カテーテル逆流孔閉鎖術を施行し、手術時間約2時間でPVLが高度から、軽度に改善させたという。
この治療法は、心尖部より直接心臓へ穿刺し、カテーテルを挿入。経カテーテル的にワイヤーを逆流孔へ通して、閉鎖デバイスを運び留置することで、逆流孔からの血液の逆流を止めるというもの。これにより、再手術が必要な患者に対し、低侵襲・短時間での治療が実現した。同チームは、今後もこの治療法を臨床研究として、4人の患者に行う予定としている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース