PD-1、B7.1の相互作用でT細胞の働きを阻害
スイスのF. ホフマン・ラ・ロシュは3月15日、白金製剤ベースの化学療法施行中または施行後に病勢進行を認めた(転移例)、または白金製剤ベースの化学療法による術前または術後補助化学療法を行い12か月以内に病勢進行を認めた局所進行または転移性尿路上皮がん(mUC)患者への抗PD-L1抗体「atezolizumab」(MPDL3280A)の投与について、米国食品医薬品局(FDA)が生物学的製剤承認申請(BLA)を受領し、優先審査に指定されたと発表した。
尿路上皮がんは全ての膀胱がんの90%を占め、腎盂、尿管および尿道でも認められており、mUCは予後不良であり治療選択肢が限られているのが現状だ。UCは世界で9番目に多いがん種で、2012年には43万人が新たに診断され、毎年、世界中で約14万5,000人が死亡している。UCは女性に比べ男性が3倍多く罹患しており、先進国以外の国々よりも先進国では3倍多いと言われている。
同剤は、腫瘍細胞または腫瘍浸潤免疫細胞上に発現するPD-L1と呼ばれるタンパク質を標的とし結合するように設計された開発中のモノクローナル抗体。PD-L1は、T細胞の表面上に見られるPD-1、B7.1の双方と相互作用することにより、T細胞の働きを阻害する。同剤がこの相互作用を阻害することでT細胞が活性化され、腫瘍細胞を効率的に検出し攻撃する能力を取り戻すことが可能になるという。
国内でも非小細胞肺がん、膀胱がんなどを対象にした臨床試験が進行中
優先審査指定は、安全性、治療ならびに予防、または診断の有用性について、重篤な疾患に対して明確な優位性をもたらすとFDAが判断した薬剤に付与されるもの。同剤は、PD-L1が発現している転移性膀胱がん患者への治療に対し、FDAより2014年5月に画期的治療薬に指定されている。また、BLA提出は、第2相臨床試験であるIMvigor 210試験の成績に基づいており、FDAは2016年9月12日までに承認の判断を行う予定。
現在、日本国内では、非小細胞肺がんを対象とした第2相国際共同治験ならびに第3相国際共同治験、非小細胞肺がんの術後補助療法の第3相国際共同治験、膀胱がんを対象とした第3相国際共同治験、筋層浸潤膀胱がんの術後補助療法の第3相国際共同治験、および腎細胞がんを対象とした第3相国際共同治験に参加している。
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