暫定認定期間を経て、2019年に認定薬剤師が誕生
3月13日、先頃設立された一般社団法人日本老年薬学会の設立記念講演会が、東京・旗の台の昭和大学上條講堂で開催。記念講演に先立ち、老年薬学認定薬剤師制度について説明を行った。
当日は多くの聴衆が集まりほぼ満員に(写真は講演資料)
同学会では、老年薬学認定薬剤師に求められる資質として、「老年症候群の主要な症状(誤嚥、転倒、せん妄、認知症、排尿障害、寝たきり、褥瘡など)を有する高齢者に対し薬学的管理・指導をすることで、生活の質の改善に寄与することができる」「多くの疾患を抱える高齢者に対して包括的な薬学的管理・指導ができる」「薬物関連問題(多剤処方、重複投薬・相互作用、薬物有害事象など)を抑制するために、処方を見直し、医師に提言することができる」など6項目を挙げている
そのためのカリキュラムとして、「加齢に伴う生理・身体機能の変化」「多職種との連携」などの座学のほか、実技として、車椅子・高齢者疑似体験やフィジカルアセスメントなどの全11項目をリストアップしている。
同学会では、暫定認定期間を設けた後、2019年には正式に認定薬剤師を誕生させたいとしているほか、老年薬学の研究者を対象とした老年薬学指導薬剤師や、同認定薬剤師の専門性を高めた老年薬学専門薬剤師についても、今後、制度設計をしていく予定としている。
秋下代表理事「評価されるからといって減らすことが目的化されてはいけない」
続いて行われた記念講演では、秋下雅弘代表理事(東京大学大学院医学系 研究科加齢医学教授)が昨年まとまった「高齢者薬物療法ガイドライン2015」などを踏まえ、高齢者に対する適切な薬物療法の確立に薬剤師および医師、関連職種従事者が果たすべき役割について講義を行なった。主なテーマとしたのは、ガイドラインを活用したポリファーマシー軽減への取組み。今年4月の報酬改定で、6剤以上の処方に適切に介入し5剤以下にした場合、診療報酬上の評価がなされることになったが、この件に関しては「評価されるからといって減らすことが目的化されてはいけない。メリットがはっきりしていてもご本人の希望があれば維持することも選択肢」とし、高齢者の薬物療法においては、まずは患者の信頼を得て、慢性疾患の管理をきちんと行なうことでQOL、ADL維持向上に寄与することが大切だと訴えた。
同講演会ではほかに、倉田なおみ昭和大学薬学部教授が「高齢者の身体能力に合わせた服薬支援と製材の知識」について、飯島勝矢東京大学准教授がADL低下予防への薬剤師の関与について講演した。
講演がすでに認定薬剤師育成のカリキュラムとなっていることもあり、会場は早々に満席。各講演の最中、熱心に聞き取り、メモを取る聴講者の姿も多かった。2016年度は関東、中京、関西3ブロックそれぞれに同じ内容で3回講演が行われる予定だ。
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