横浜バイオリサーチアンドサプライは、2006年に設立し、職員18人、顧問6人。横浜市鶴見区の横浜バイオ産業センター内にバイオ医薬品の初期開発を行える拠点を有し、さらに今回、癸巳化成のH&Bセンター内にバイオ医薬品の商用生産施設を建設し、4月から稼働を開始する。
もともと癸巳化成は合成着色料の技術開発で実績があり、バイオ領域では蛍光色素によるDNA検出法を開発するなどの技術を持つ。基本設計から建設までにかかった期間はおよそ1年と、バイオ医薬品の製造で通常3年かかる準備期間を大幅に短縮した。製造能力としては1000リッターの培養槽2基を導入。培養タンクに使い捨てのバッグを入れることで、ライン切り替え時の洗浄工程期間を短縮できる「シングルユース」などの生産設備を用いているのが特徴。多品目製造にも対応しており、短期間で製品を生産できるスピード感が強みだ。
加瀬氏は、「バイオ新薬をターゲットとするのはハードルが高い」と述べ、抗体医薬のバイオ後続品に焦点を当てる。今後、抗体医薬のバイオ後続品が相次いで特許切れしていく流れにある。「品質面で安心・安全な製剤を届けたい。そこで成果を得られれば高く評価される」とリスクの高い事業に挑み、先行者利益を狙う。
既に引き合いは来ている。ただ、数万リッター規模の培養槽を持つ他のバイオCMOに比べ、2000リッターの培養槽ということもあり、安定供給や製品の市場性、生産効率性、委託先企業の販売力など総合的に加味した上で品目や企業を選定している状況だ。その後はバイオ後続品を改良したバイオベター製品、そして希少疾患のバイオ新薬へと事業拡大する構想を持つ。
海外ではロンザやサンド、韓国ではセルトリオンといった企業がバイオ製造で世界をリードする。バイオ後続品を手がける国内製薬企業も海外企業と提携しており、ほとんどが海外での原薬生産だ。国内にもバイオCMOと呼ばれる企業が数社存在しているが、いずれも資本力のある会社ばかり。そこに中小企業が持つスピード感、きめ細かなサポート、コスト競争力で競争に打ち勝つ考えだ。
加瀬氏は「まずは会社としての認知度を高めたい。中小企業の良さを発揮し、結果が出せれば全国に成功体験を発信していく。日本の産業構造を変えられるよう歯を食いしばって頑張りたい」と意気込みを見せる。