低コレステロール域での死亡率上昇は肝疾患などによるもの
りんくう総合医療センター 病院長で、大阪大学大学院医学系研究科 総合地域医療学寄附講座・循環器内科学特任教授の山下静也氏は、コレステロールの誤解が広がっている、とサノフィ株式会社主催のメディアセミナーで行われた講演で警鐘を鳴らした。
りんくう総合医療センター 病院長 山下静也氏
山下氏は誤解が広がっている例として「LDLコレステロール(LDL-C)の下げすぎは身体に悪いのか?」などを挙げ、研究結果や論文などをもとに反論した。
「LDL-Cの下げすぎは身体に悪いのか?」について、山下氏は17.3年の追跡調査を行った「NIPPON DATA 80」の結果をもとに、肝疾患と5年以内の発がん症例を除くと、低コレステロール域での総死亡率上昇は認められず、コレステロールが原因ではなく、肝疾患や潜在性のがんによる死亡率の上昇と考えられる、と語った。「人間の胎児の総コレステロールは50~60ml/dl程度、大部分がHDLコレステロールでLDLコレステロールは10~20ml/dl程度です。マウスなどの動物の総コレステロールでも同じレベルです。したがって下げすぎで問題になることはまずないと考えます」(山下氏)
1人ひとりに合わせたLDL-C管理が重要
山下氏は「高コレステロール血症の怖さは自覚症状がないこと。早期治療で将来の突然死のリスクを減らすことが大事」と、LDL-C目標値ありきではなく、他の持病や家族歴など、1人ひとりに合わせたLDL-C管理の重要性を強調。「LDL-Cを約40ml/dl低下させることで、1年あたりの心血管病の発症リスクが22%低下します。日本人の4人に1人が亡くなる心血管病の患者さんを1人でも減らすことができれば」と語った。
メディアセミナーではほかに、日本ならびにEUの合計約1万2,000人を対象にしたコレステロールに関する意識調査の結果を発表。日本ではEUと比較し、コレステロールに関する知識が不足しており、高コレステロールをリスクとして十分に認識しておらず、心血管病に対する問題意識、当事者意識が低いことが明らかになった。
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・サノフィ株式会社 プレスリリース