■医師との連携も重要
中井氏は、かかりつけ薬剤師指導料について、調剤報酬において、「人に対する初めての評価」とした上で、「かかりつけ薬剤師はこれからの重要なキーワードになる。丁寧に育てることが大事」との考えを示した。
ただ、同加算をめぐっては、患者の同意を取ることをはじめ、▽3年以上の薬局勤務経験▽同じ薬局に週32時間以上勤務し、薬局に6カ月以上在籍▽医療にかかる地域活動の取り組みに参画――などが要件として設定されており、「厳しい」といった意見も出ている。
中井氏は、「仮に要件のハードルを下げて算定しやすくしても、かかりつけ薬剤師に対して批判が出てしまった瞬間に次がなくなる」と指摘。分業バッシングに対抗する手段としては、「残念だが、かかりつけ薬剤師くらいしかない」とし、「厳しく、丁寧に育てることが大事」との認識を示した。
一方で、「これまでやってこなかったから厳しいと思うだけで、求められていることは、医師をはじめ、病院薬剤師、地域で顔の見える関係を築いている薬剤師にとっては当たり前のこと。それほど厳しいハードルではない」ともした。
今回の改定では、地域におけるチーム医療を進める観点から、「医師と連携して薬物治療を行うのが大きなキーワードになっている」と説明。そうした連携の中で、「薬剤師の職能を発揮して無駄な薬剤を減らし、適正使用につなげることが期待されている」と強調した。
一方、いわゆる大型門前薬局の評価を適正化するため、グループ全体の処方箋受付回数が月4万回超のグループに属する薬局のうち、▽処方箋集中率が95%超▽特定の医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある――薬局の調剤基本料を引き下げた。
また、特例点数(25点)に該当する調剤基本料2(25点)については、特定の医療機関からの受付枚数を従来の2500枚から2000枚に引き下げ、月4000枚の処方箋を受けていたら、集中率にかかわらず対象となるよう変更した。
中井氏は、「医薬分業の効果を最大限に発揮するためには、面分業が一番。集中率は下げていくことが求められる」とし、「困難なことかもしれないが、そこは目指していくべき」と主張した。
調剤に対する風当たりが厳しい中での改定となったが、「あまり無茶なことはしたくなかった」という。中井氏は、「医薬分業も一気に進めた結果、このような状態になった」と述べ、急激な改革に伴う副作用を懸念し、「やはり累次にわたる改定で徐々に進めていくべきだろう」とした。
それでも、調剤報酬に対する圧力が強まっていった時には「うまく反論できるかどうか、かなり不安に思い、つらい時もあった」との心情も吐露した。
結果的に、かかりつけ薬剤師の評価という方向性を打ち出し、中央社会保険医療協議会の支払側からも評価されたことから、「期待に応えるためにも、丁寧に育てなければいけないと肝に銘じている」と語った。