予後不良で治療選択肢も限られる消化管/肺原発の進行性非機能性NET
スイスのノバルティス社は2月26日、「アフィニトール(R)錠」(一般名:エベロリムス)が、消化管又は肺原発の局所進行、転移性または切除不能の高分化型の進行性非機能性神経内分泌腫瘍(NET)を有する成人患者の治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)から承認されたことを発表した。
NETは全身の神経内分泌細胞から生じる希少がん。特に消化管、肺、膵臓に多く発生し、機能性のものと非機能性のものがある。機能性NETはホルモンなどの物質の過剰分泌によって症状を生じ、非機能性NETでは腫瘍の増殖による症状がみられる。消化管NETの場合は腸閉塞、疼痛、出血など、肺NETの場合は喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺炎などが生じることがある。
海外の疫学によると、NET患者の70%以上は非機能性腫瘍だという。腫瘍発生部位によって異なるが、診断されたときには消化管NET患者の5~44%、肺NET患者の28%が、すでに進行している状態、つまり、がんが転移して治療が困難な状態になっているとされる。進行して、腫瘍の持続的な増殖と転移がみられると、一般的には予後不良となる傾向にある。
肺NETに対する初の承認薬、消化管NETに対する初の経口治療薬に
今回のアフィニトールの承認の根拠となったのは、ピボタル試験である「RADIANT-4試験」の有効性および安全性データである。RADIANT-4試験では、アフィニトールがプラセボ群に対し、消化管/肺原発の高分化型の進行性非機能性NET患者の進行リスクを52%低下(ハザード比[HR]0.48、[95%信頼区間(CI)0.35~0.67]、p<0.00001)。さらにアフィニトールは、無増悪生存期間(PFS)の中央値を7.1か月延長させたという。中央判定によるPFSの中央値はアフィニトール群で11.0か月(95%CI、9.23~13.3)、プラセボ群で3.9か月(95%CI、3.6~7.4)だった。
なお同剤は、日本においてアフィニトール錠の販売名で、2010年1月に根治切除不能または転移性の腎細胞がん、2011年12月に膵神経内分泌腫瘍、2012年11月に結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫および結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫、2014年3月に手術不能または再発乳がんを効能または効果として承認を取得しており、2015年9月にNETに対する効能追加申請を行っている。また、アフィニトール分散錠については、2012年12月に結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞性星細胞腫を効能または効果として承認されている。この他、現在、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、結節性硬化症に伴うてんかんを対象とした第3相国際共同治験に参加している。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース