同じ結果に結びつく図形をカテゴリー化して記憶し、予測的に行動
東北大学は3月8日、二ホンザルを用いた実験で、カテゴリー化によって情報を整理して判断する神経活動を、前頭連合野において発見したと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究科の筒井健一郎准教授と細川貴之助教らによるもの。同研究成果は、脳神経科学誌「Journal of Neuroscience」3月号に掲載されている。
画像はリリースより
今回の研究では、まず複数の抽象図形を、数秒後にジュースあるいは食塩水が与えられることを示す予告刺激として用いて、予測的に行動するようニホンザルに訓練した。するとサルは、それぞれの図形と、ジュースあるいは食塩水の関係を学習し、ジュースを予測すると、それが口元のチューブから出てきたときに取りこぼしなく飲めるようにチューブを舐めながら待ち、食塩水を予測すると、それを飲まないで済むように口を閉じて待つようになったという。
さらに、ときどき、刺激とジュース・食塩水の関係をすべて入れ替えることによって、2つのルールの下で課題を実施。そのようなルールの切り替えを行いながら、長期間サルを訓練したところ、サルはたくさんの図形のなかのひとつの図形の意味が変化したことを経験しただけで、ほかの図形についても意味が変化するということを予測して行動できるようになったという。このような行動は、サルが同じ結果に結びつく図形をカテゴリー化して記憶しており、そのカテゴリーを使って考え、判断することによって、予測的に行動していることを示すものであるという。
アスペルガー症候群などの病態理解や新たな治療法の開発に期待
次に、サルがこの課題を行っている間に、前頭連合野から神経活動の記録を行った。その結果、前頭連合野の神経細胞の一部が、特定のカテゴリーの図形をサルに見せた時だけ興奮したことから、図形を見て想起したカテゴリーの情報を保持していることが明らかになったという。
また、これらの細胞の周辺には、ジュースと食塩水のどちらが与えられるのかということ、つまりカテゴリーを使って予測した結果の情報を保持している神経細胞もあることが判明。さらに、前頭連合野の神経細胞群がどのようにこの推論問題を解いているかを明らかにするため、現在も神経活動データの解析を進めているという。
これらの成果により、抽象的概念の形成やそれを使った論理的思考にかかわる神経メカニズムの解明が大きく進むと考えられる。また、抽象的な思考が不得意だとされるアスペルガー症候群などの発達障害の病態の理解や、新たな治療法の開発にもつながることが期待される。
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・東北大学 プレスリリース