インドールにプレニル基を付加する酵素の反応メカニズムを解析
東京大学は3月9日、同大大学院薬学系研究科の森貴裕助教と阿部郁朗教授らの研究グループが、複雑な天然物を生体内で合成する酵素が、プレニル基を付加するメカニズムとその酵素の立体構造を明らかにしたと発表した。この成果は、「Nature Communications」オンライン版に3月8日付けで掲載されている。
画像はリリースより
自然界にはさまざまな構造の化合物があり、創薬の材料として探索されている。中でもテルペンインドールアルカロイドと呼ばれる化合物群は、腐敗臭として認識されるインドールに5の倍数の炭素から構成されるプレニル基が付加した中間体を経て生体内で合成され、多様な生理活性を持つことが特徴だ。
このような複雑な構造を含む天然化合物は生物の持つ酵素によって合成され、これらの酵素はユニークな反応を仲介する生体触媒として注目されている。しかし、インドールにプレニル基を付加する酵素の反応メカニズムには不明な点が残されていた。
酵素反応を用いた分子デザインと創薬への応用に期待
今回、研究グループは、インドールに異なる長さのプレニル基を、通常の反応とは異なる「逆転位」(リバースプレニレーション)という方法で付加させる2つの酵素の結晶構造を得ることに成功し、そのメカニズムを解明。また、2つの酵素の構造を比較した結果、プレニル基の長さを制御するメカニズムも明らかにした。加えて、これらの酵素は炭素数25の長さまでの基質を用いたプレニル化反応を触媒できることを発見したとしている。
プレニル化は天然物の活性を向上させるために重要な反応として知られているため、今回の成果は、有機合成では困難な反応に同酵素を用いるなど、生体触媒によるドラッグデザインへの貢献が期待される。
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