治療前後でのエネルギーバランスの変化等について総合的に検討
京都大学は3月7日、睡眠時無呼吸症候群の患者が持続性陽圧気道(CPAP)によって治療を受けた後に、体重が増加するメカニズムを明らかにしたと発表した。これは、同大大学院医学研究科呼吸器内科学の立川良大学院生と同研究科呼吸管理睡眠制御学講座の陳和夫特定教授らが、同研究科糖尿病・内分泌・栄養内科学の池田香織特定助教と共同研究を行って得られた成果。この結果は「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」オンライン版に3月1日付けで公開されている。
画像はリリースより
肥満は生活習慣病の重要な危険因子であり、肥満と睡眠時無呼吸症候群が深く関係していることは良く知られているが、睡眠時無呼吸症候群の患者をCPAPで治療した後にも体重の増加現象が見られることが、近年明らかになっていた。現在、日本には300~500万人の睡眠時無呼吸症候群患者がいると推定されているが、CPAP治療患者は約40万人。そのうち6~7割は肥満あるいは過体重と言われている。
そこでこの現象のメカニズムを明らかにするため、研究グループはCPAPの治療前後でのエネルギーバランスの変化とそれに関係する因子について、総合的な検討を行ったという。
基礎代謝の変化と食生活の重要性を確認
その結果、CPAP治療後には、交感神経活動の低下などによって、体重増加者・非増加者いずれも基礎代謝が約5%低下。また身体活動量は両群とも変化がなかったことから、エネルギー消費量は治療によって両群とも同じように低下していると考えられる。一方で、エネルギー摂取量は体重増加者において治療後に多くなっており、体重変化が食事内容に左右されていることが分かったという。
そこで、体重増加者と非増加者に見られる食行動の違いも調査。食行動は「食事内容」「食べ方」「空腹・満腹感覚」など7つのカテゴリーで評価され、スコアが高いほど肥満につながりやすい食行動の乱れがあることを意味する。体重増加者では一貫してスコアが高く、食行動が乱れている人では過食から体重増加を起こしやすいことが判明。また、体重非増加者では経過とともにスコアが低下しており、食生活・食行動の改善を伴っていたことが分かったという。
今回の研究によって、睡眠時無呼吸の患者は治療後にいわば省エネ体質となっていることが示され、体重を意識せずにいると容易に体重が増える状況にあることが判明した。日本でも頻度の高い中等症・重症の閉塞性睡眠時無呼吸患者の臨床症状の改善や脳心血管障害予防に CPAPは有効な治療だが、治療前には体重について注意を喚起し、生活習慣の改善指導を併せて行うことが重要であると、研究グループは述べている。
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・京都大学 プレスリリース