出来事への対処パターンが、がんや循環器疾患リスクに関与
国立がん研究センター がん予防・検診研究センターは3月4日、多目的コホート(JPHC)研究から、日常経験するいろいろな問題や出来事への対処方法と、がん・循環器疾患リスクとの関連を検討した研究結果を発表した。論文については、がんとの関連が「Cancer Epidemiology」に、循環器疾患との関連が「European Heart Journal」に、1月からそれぞれのウェブサイトで先行公開されている。
画像はリリースより
日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方は、心理的ストレスに対応するために重要であり、さまざまな健康アウトカムの危険因子であることが明らかになってきている。現在までの先行研究から、ストレスへの対処方法は、がんの診断・進展やがん患者の生存率と関連があることも報告されていた。そこで今回の研究では、日常経験する問題や出来事に対する対処の仕方と、がん罹患・死亡、循環器疾患罹患・死亡との関連を検討したという。
対処型の行動パターンでがん死亡・循環器疾患死亡のリスクが低下
JPHC研究では、平成12年(2000年)と平成15~16年(2003~2004年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所管内に住んでいた人のうち、50~79歳の男女約11万人を、平成23年(2011年)まで追跡した調査結果に基づいて解析を実施した。
具体的には、次の6つの行動パターンについてそれぞれの頻度を質問し、それぞれを頻度の少ない群と多い群に二分し、がんや循環器疾患のリスクを比較したという。
■対処型行動:「解決する計画を立て、実行する」「誰かに相談する」「状況のプラス面を見つけ出す努力をする」
■逃避型行動:「変えることができたらと空想したり願う」「自分を責め、非難する」「そのことを避けてほかのことをする」
今回のがんの研究対象に該当した55,130人のうち、追跡期間中に、5,241人にがんが発生し、1,632人のがん死亡を確認。また、循環器疾患の研究対象に該当した57,017人のうち、追跡期間中に、304人に心筋梗塞、1,565人に脳卒中が発生。さらに、191人の虚血性心疾患死亡、331人の脳血管疾患死亡が確認された。
がんについては、「対処型行動をとる人でがん死亡のリスクが低下」、「その中でも、『状況のプラス面を見つけ出す努力をする』人でがん死亡のリスクが低下」、「全がん罹患では有意な関連はみられず、対処型行動で限局性がんや、検診でがんが発見されることが多い」という結果が確認された。
また循環器疾患については、「タイプ別で罹患のリスクに有意な違いはみられず」、「対処型行動をとる人では、脳卒中のリスクが低下」、「対処型行動をとる人で循環器疾患による死亡のリスクが低下」という結果が見られたという。
今回の研究結果からは、積極的に情報を収集し、健康診断を受け、医療機関に相談する可能性が高い“対処型の行動”を培うことが重要と考えられると、同センターは報告している。