カルシウム濃度維持を担う仕組みを解析
北海道大学は3月4日、新たな骨カルシウム溶解メカニズムを発見したと発表した。この研究成果は、同大と東北大学や慶應義塾大学、ラトックシステムエンジニアリング株式会社の共同研究により開発された高感度三次元X線顕微鏡を活用して明らかになったもの。雑誌「BONE」オンライン版に、2015年12月17日付けで掲載されている。
画像はリリースより
骨細胞は、骨折やひび割れなどの異常が起きると、破骨細胞が異常の生じた部位を削る。その後、骨芽細胞が活動し、その部位を元に戻していく。さらに、破骨細胞は、血液中のカルシウム濃度が低下した際、濃度を一定に保つため骨表面を溶かし、血液中にカルシウムを供給する役割も担っていると言われている。
一方で破骨細胞が存在しないマウスでも、そのマウスは生存し得ることが判明しており、破骨細胞の働き以外に、カルシウム濃度維持を担う仕組みが存在することが示唆されていた。
骨細胞と骨細管のネットワークによるカルシウム溶解・蓄積作用が明らかに
同研究グループは今回、マウスの脛骨を棒状に加工。X線顕微鏡観察に有効な大型放射光施設「SPring-8」において、開発した高感度三次元X線顕微鏡で観察を実施した。この顕微鏡は、骨組織の微妙な密度変化を三次元的に可視化することができるという。
画像解析の結果、直径0.1~0.4μmほどの骨細管に比べて 10~30倍大きな範囲で骨のカルシウムが減少。骨細管に平行な断面を確認すると、骨細管に沿ってカルシウム濃度が低下していることが分かった。さらに骨細管に直交する断面では、ほとんどの骨細管の周りで骨細管に近いほどカルシウムが多く減少していることも明らかになったという。
これまで、血液中のカルシウム濃度が低下すると破骨細胞が骨表面を溶かし、血液中にカルシウムを供給すると考えられていた。しかし、骨の中に無数に存在する骨細胞も骨細管を利用し、骨形状を破壊せずに骨内部からカルシウムを溶解して、血中に放出する働きを持っていることが今回の研究で判明した。今後、骨が減少する病気の新しい予防や治療方法につながることが期待される。
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・北海道大学 プレスリリース