■基礎薬439品目が薬価維持
厚生労働省は4日、全面改定した薬価基準を官報に告示した。4月1日から実施する。薬価ベースで平均5.57%(医療費ベースで1.22%)引き下げられるほか、通常の市場拡大再算定でも0.9%(同0.19%)引き下げられる。さらに、年間売上が大きい品目に適用される特例拡大再算定が直撃。C型肝炎治療薬の「ソバルディ」と「ハーボニー」は31.7%もの引き下げを受けた。後発品への置き換えが進まない先発品も1057品目が特例引き下げを受け、業界に大きな影響を与える厳しい改定となった。一方、今回は初めて基礎的医薬品の薬価維持が行われ、計439品目が対象となった。
薬価基準が改定されるのは合計1万5925品目。そのうち、不採算品目を理由に111品目が現行薬価から引き上げられる。
今回の薬価改定では、通常の市場拡大再算定と別枠で、年間販売額が大きい品目の薬価を引き下げる特例拡大再算定を導入する大きなルール変更が行われた。対象となったのは、サノフィの抗血小板薬「プラビックス」、ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬「ソバルディ」と配合剤の「ハーボニー」、中外製薬の抗癌剤「アバスチン」の4成分6品目。
引き下げ率は、プラビックスが17.1%、新薬創出等加算の返還分を含めると28.8%だった。ソバルディとハーボニーは31.7%もの引き下げを受け、1錠6万1799円だったソバルディの改定後薬価は4万2240円、1錠8万0171円だったハーボニーの改定後薬価は5万4797円と、2万円以上も引き下げられる。アバスチンは補正加算率を加味して10.9%となった。また、通常の市場拡大再算定は44品目に適用され、大きな影響を受けた。
初後発品の収載から5年経過後も後発品への置き換えが数量シェア70%に満たない先発品(長期収載品)の特例引き下げも引き続き行われる。
政府の後発品使用促進策の方針を受け、置き換え率を前回改定の60%未満から10%引き上げ、70%未満に見直す新たな算定ルールを適用した特例引き下げは、合計1057品目が対象となった。
後発品への置き換え率が30%未満の長期収載品で、2%の引き下げ対象となったのは400品目、30%以上50%未満で1.75%の引き下げ対象は391品目、50%以上70%未満で1.5%の引き下げ対象は266品目だった。置き換え率のルールが10%厳しくなったものの、前回改定の1118品目と大きな変化が見られないことから、後発品の使用が順調に進んでいるものと見られる。
一方、新薬創出等加算は要件を満たした823品目が加算対象となった。加算率の最高は5.41%、加算対象823品目のうち656品目(79.7%)で薬価が維持された。後発品のない先発品全体に占める加算対象品目の割合は約37%と前回と同様だった。
新薬創出等加算の品目数が多かった製薬企業は、ファイザーが前回に続きトップで52品目、次いでノバルティスファーマが48品目、ヤンセンファーマが46品目、グラクソ・スミスクライン(GSK)が42品目と続いた。
さらに、MSD、アステラス製薬、日本イーライリリーが30品目で並び、上位5社のうちアステラス製薬が内資企業で唯一名を連ねた。
これに対し、要件を満たさなくなった新薬で加算相当額を返還したのは112品目となった。
今回、臨床現場で広く使用され、要件を満たした基礎的医薬品の薬価を維持する新たなルール変更も行われた。最も販売額が大きい銘柄に価格を集約し、薬価を維持するもの。新たな算定要件を適用して薬価が維持された基礎的医薬品は、抗生物質や輸液など134成分439品目となった。
さらに今回、真の臨床的有用性の検証による加算対象に、日本ベーリンガーインゲルハイムのSGLT2阻害薬「ジャディアンス錠10mg、同25mg」の1成分2品目が適用された。標準治療への上乗せ効果を検討した大規模臨床試験で、糖尿病治療薬として初めて心血管リスクと心血管死を有意に減少させたエビデンスが評価されたもので、改定前薬価から約1.4%引き上げられた。
小児適応の効能追加、希少疾病の効能追加で加算対象となったのは、それぞれ18品目、31品目あった。不採算品再算定では、生薬のタイソウ、トウニン、抗てんかん薬のエトトイン、抗癌性抗生物質のアクチノマイシンD、血液代用剤の乳酸リンゲルなど111品目の薬価を引き上げる。
後発品の数量シェアは、昨年9月の薬価調査をもとにしたところ、新指標で56.2%となった。