化学療法剤や分子標的薬使用時の免疫不全や副作用が問題に
千葉大学は3月2日、同大大学院理学研究科基盤理学専攻の坂根郁夫教授を中心とした共同研究チームが、がん細胞を死滅させ、なお且つ、がん免疫を活性化する化合物「CU-3」を発見したと発表した。
従来の抗がん剤である化学療法剤は、あらゆる細胞に発現している細胞増殖機構を制御するため、正常細胞の増殖も抑制してしまう。特に、骨髄細胞の分化増殖能を低下させ、免疫系の不全をもたらすことが臨床において問題となっている。また、近年増加している分子標的治療薬も、その薬物の標的蛋白は、正常細胞においても発現しているため、臨床では特有の副作用が生じることが知られている。
DGKαを特異的に阻害する化合物が、画期的な抗がん剤となる可能性
ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)のαアイソザイム(DGKα)は、悪性黒色腫や肝細胞がんの増殖を亢進するが、Tリンパ球では逆に増殖停止・不活性化(anergy)へ誘導する。つまりDGKαを阻害する薬剤は、直接がん細胞死を誘導し、且つ、Tリンパ球を活性化することで、がん免疫亢進作用によるがん細胞死滅が期待でき、理想的・画期的な抗がん剤になると考えられた。
そこで共同研究チームは、DGKα阻害化合物を探索するため、近年開発したハイスループットスクリーニング系を用い、東京大学創薬機構の化合物ライブラリーをスクリーニング。DGKαを特異的に阻害する化合物「CU-3」を得たという。
報告によるとCU-3は、実際にがん細胞の死滅を誘導し、Tリンパ球を活性化したという。今後、更に最適化研究を行い、画期的な次世代抗がん剤の早期開発を目指すと研究チームは述べている。
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・千葉大学 ニュースリリース