バイオマーカーとして有望なマイクロRNAをスクリーニング
東京医科歯科大学は2月29日、大規模ヒト疾患ゲノム情報に基づくマイクロRNAをスーパーコンピューター上でスクリーニングする遺伝統計解析手法「MIGWAS」を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科の疾患多様性学分野の研究チームによるもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版に、3月1日付けで掲載されている。
画像はリリースより
マイクロRNAは、標的遺伝子と結合することにより、遺伝子からタンパク質への翻訳過程を制御することが知られている。マイクロRNAは、悪性腫瘍や免疫関連疾患など多彩な疾患において病態を予測するバイオマーカーや治療標的としての役割が期待されており、数千種類も存在するマイクロRNAの中からバイオマーカーとして有望なものを選び出すスクリーニングが重要とされている。
これまでのマイクロRNAスクリーニングは、一部のマイクロRNAに対する機能的実験により行われていたため、より網羅的なスクリーニング手法の開発が望まれていた。また、次世代シークエンサーの大規模ヒト疾患ゲノム解析により同定された疾患感受性遺伝子の情報を活用した、新たなマイクロRNAスクリーニング手法の開発に期待が高まっていた。
ゲノムビッグデータを活用した探索が可能に
今回、研究グループは、18形質(身長、肥満、血液検査値、生化学検査値、生活習慣病、精神疾患、臓器疾患、免疫関連疾患など)、約175万人以上を対象とした既存のゲノムビッグデータ解析結果に、スクリーニング手法「MIGWAS」を適用。その結果、関節リウマチ、腎機能、身長を含むヒト形質の遺伝的背景にマイクロRNAが寄与していることが明らかになったという。この結論は、国際論文データベースに登録された論文抄録における疾患ごとのテキスト・マイニング結果とも有意な相関関係が認められ、MIGWASの妥当性を示唆する所見と考えられる。
MIGWASの特色は、疾患感受性に関わるマイクロRNAと標的遺伝子ペアのリストが得られる点。各疾患におけるバイオマーカー候補として有用と考えられる。実際に、今回は新たな関節リウマチ感受性遺伝子「PADI2」と、その機能を制御するマイクロRNA「miR-4728-5p」を同定。PADI2遺伝子は創薬ターゲットとしても知られており、同定されたマイクロRNAにも同様の期待がかけられるという。
大規模ヒト疾患ゲノム解析の結果とマイクロRNAが構成するネットワークを検討する遺伝統計解析手法の開発により、ゲノムビッグデータ分野における効果的なデータ共有と再利用の促進にも寄与するものと期待される。
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