年間2億人以上が新たに感染し、43万8,000人が死亡しているマラリア
ノバルティス ファーマ株式会社は2月26日、抗マラリア薬である「アルテメテル」と「ルメファントリン」の配合錠について、「合併症のない急性熱帯熱マラリア」を適応症として、製造販売承認申請を行ったと発表した。
マラリアは、メスのハマダラカの刺咬によりマラリア原虫が体内に侵入することによって感染する原虫性の疾患。マラリア感染の予防や制御などの対策が進み、年々マラリア感染者数およびマラリアによる死亡者数は減少しているものの、現在でも世界最大の感染症のひとつである。アフリカ、アジア、オセアニア、および中南米など、熱帯、亜熱帯地域を中心に約100の国または地域で流行し、年間2億人以上が新たに感染し、43万8,000人が死亡している。
熱帯熱マラリア原虫に感染した場合には、速やかに適切な処置を施さないと短期間のうちに重症化するリスクがある。重症化していない熱帯熱マラリアは「合併症のない急性熱帯熱マラリア」と呼ばれている。
現在、日本で報告されるマラリアの患者は、すべて外国に渡航した際に感染した患者。国内での患者数は2000年の154人をピークに漸減傾向で、最近では年間50~70人前後で推移しており、このうち熱帯熱マラリアの患者数は30~40人となっている。
医療上の必要性の高い未承認薬として開発要請
世界保健機関(WHO)ガイドラインにおいて「合併症のない急性熱帯熱マラリア」の治療には、アルテミシニン誘導体と作用機序の異なる他剤を組み合わせた併用療法(artemisinin-based combination therapy、以下、ACT)が第一選択薬に位置づけられている。同剤はACTとして最も使用されている薬剤であり、過去18年間において60か国以上で承認。アルテメテルとルメファントリンは、いずれも赤血球内に侵入したマラリア原虫に対して活性を示すことで、効果を発揮すると考えられている。
日本において同剤は未承認だが、これまでに熱帯病治療薬研究班が輸入し、同研究班に所属する医療機関で使用されてきた。このような状況において、熱帯病治療薬研究班より「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬」として同剤の小児および成人に対する抗マラリア薬としての開発要望があり、2014年8月、同社は厚生労働省より開発要請を受けたという。
国内で報告されるマラリア患者は少数だが、WHOガイドラインで第一選択薬に位置づけられている同剤を日本の患者に届けることは、重要な使命である、と同社は述べている。
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・ノバルティス ファーマ株式会社 プレスリリース