miRNA活性の差が小さい場合でも、異なる細胞種を精密に分離
京都大学は2月25日、細胞内のマイクロRNA活性を定量的に感知するmRNAを合成し、2倍以内というわずかなmiRNA活性の差にもとづいて異なる種類の細胞を同定、分離することに成功したと発表した。この研究は、同大iPS細胞研究所(CiRA)の齊藤博英教授、東京大学新領域創成科の遠藤慧助教(CiRA元研究員)らの研究グループによるもの。研究成果は、英科学誌「Scientific Reports」に2月23日付で公開されている。
画像はリリースより
細胞機能の解析や臨床応用の細胞を調製するためには、細胞の種類を正確に同定し、分離することが必要。しかし、これまでの手法では、分離したい細胞間に、miRNA活性の大きな差がみられない場合には、利用することができなかった。
そこで研究グループは、複数種類の合成mRNAを利用。miRNA活性の差が小さい場合でも、異なる細胞種を精密に分離できる手法の開発に取り組んだという。
新規薬剤の探索効率や細胞療法の効果を高めることにも期待
まず、試験管内で合成された複数種類のmRNAをあらかじめ混合して細胞に導入すると、mRNAの混合比率に従って、蛍光タンパク質の発現比率が高い水準で維持されることを発見。この知見を応用し、複数のmiRNAに応答して、それぞれ異なる蛍光タンパク質の発現が抑制される合成mRNAを細胞に導入。細胞間にわずかなmiRNAの違いしかない場合であっても細胞の分離を可能にする方法を開発したという。
今回の研究によって、細胞内部のわずかなmiRNA活性の違いにもとづいて、生きた細胞を分離することが可能となった。導入するmRNAの種類を増やすことによって、さらに多くの細胞集団を分離することが可能となる。理論的には、4種類のmRNAを用いて100種類程度の細胞を分離可能としている。
また、この方法は培養細胞の品質管理にも応用できると考えられる。さらには、これまで1種類の細胞だと考えられていた細胞群や、複数種類の細胞が含まれていると考えられていても分離することができなかった細胞群から、より純粋な細胞群をこの手法により準備することができれば、細胞機能の詳細な解析はもとより、新規薬剤の探索効率や細胞療法の効果を格段に高めることができる、と研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果