褐色脂肪細胞の機能低下や数の減少、生活習慣病やメタボの原因に
京都大学は2月22日、脂肪を分解して熱を発生させる細胞である褐色脂肪細胞に存在する「TRPV2チャネル」が、脂肪燃焼を促すことを明らかにした研究結果を発表した。この研究は、同大学農学研究科の河田照雄教授、生理学研究所の富永真琴教授、国立循環器病研究センター研究所分子生理部蛋白質機能研究室の岩田裕子室長らの研究グループによるもの。研究成果は、ヨーロッパ分子生物学会誌「EMBO Report」誌3月1日号に掲載される。
画像はリリースより
脂肪細胞には、いわゆる皮下脂肪や内臓脂肪などの白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類が存在。白色脂肪細胞は細胞内に栄養を脂肪として貯蓄する一方で、褐色脂肪細胞は脂肪を分解し、熱を産生することで体温を調節する。
これまで褐色脂肪細胞は乳児期にのみ存在し、成長するにつれ消退すると考えられていたが、近年、成人であっても肩甲骨周囲や脊椎周囲に限局して存在していることが明らかになった。そして、この褐色脂肪細胞の機能低下や数の減少が、生活習慣病やメタボリックシンドロームの原因になることがわかってきた。
TRPV2チャネルを持たないマウス、肥満になりやすく
今回、研究グループは、褐色脂肪細胞の細胞膜に存在するタンパク質の一種で、機械刺激や特定の脂質による刺激によって活性化し、細胞内へカルシウムを投下するTRPV2チャネルに着目。このTRPV2チャネルが褐色脂肪細胞に特に多く発現していること、寒い環境下ではチャネルの発現量が多くなることを発見した。また、TRPV2チャネルは、冷たい刺激にさらされた際、熱産生を担うために増加する分子であるUCP1の発現量に関わっていることもわかったとしている。
さらに、TRPV2チャネルを持たないマウス(TRPV2KOマウス)を調べたところ、褐色脂肪細胞の熱産生機能が弱まり、冷たい刺激にさらされた時に体温を維持できなくなっていた。加えて、熱産生機能が弱いTRPV2KOマウスは、エネルギー消費が少なく肥満になりやすいこともわかった。
今回の研究により、これまで謎であった褐色脂肪細胞の持つ熱産生機能の生理学的メカニズムを解明することができた。褐色脂肪細胞の活性化はエネルギー消費を促すことから、メタボリックシンドロームの治療や、肥満改善のターゲットとして今後ますます注目されると考えられる。そして、褐色脂肪細胞のTRPV2チャネルの活性をコントロールすることで、メタボリックシンドロームを始めとしたさまざまな生活習慣病の予防と治療につながると期待される、と研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果