■低コストで安定生産目指す
農林水産省は、カンゾウやトウキ等の需要が多い薬用作物の国内生産拡大に向け、低コストで安定生産できる技術開発に乗り出す。2016年度から5年計画で牧草の採種技術や土壌の酸性度・水分等の調整等、他の農業技術を活用することにより、20年度に15以上の新技術を開発し、栽培・生産技術のノウハウをまとめたマニュアルを作成する予定だ。
これまで農水省は、薬用作物の産地形成を加速させるため、産地と漢方薬メーカーとのマッチング等の支援策を進めてきたが、一方、国内では薬用作物の研究が進んでいない現状があり、栽培ノウハウも失われつつあった。薬用作物の栽培に当たっても、技術が古くコスト高になってしまうことから、新規参入が難しい課題があった。そのため、薬用作物の国内生産拡大に向け、ノウハウがない農家でも栽培でき、市場に新規参入できるよう新たな技術開発に乗り出すことにした。
薬用作物の技術開発は、16年度から5年計画で進める。初年度に新規で8000万円の予算を計上し、公募により研究課題を採択する。カンゾウ、トウキ等の需要が多い薬用作物の生産性を向上させる技術について、20年度に15以上開発することを目指す。他の作物の研究者、研究機関のノウハウや技術を活用し、それをもとに低コストで安定的に生産できる栽培・生産技術の開発を進めていくことにしている。
例えば、牧草の採種技術を応用し、薬用作物の高品質種苗の低コスト生産技術を開発したり、土壌の酸性度や水分等の調整により、薬用作物の有効成分の含有率を向上させる技術を開発すること等が想定されており、5年後をメドに15以上の効率的な技術を開発し、薬用作物の栽培ノウハウ等をマニュアルとしてまとめる予定。技術開発の成果について、全国の産地や事業者に広くノウハウとして伝えることで、薬用作物栽培への新規参入を促す支援を行っていきたい考えだ。
■産地化施策も拡充
一方、農水省では薬用作物の産地化に向けた施策も拡充する。16年度予算案で4億6700万円を計上。新たに薬用作物の産地化を検討する地域等に事前相談窓口の設置や、専門家による栽培技術指導を確立させる体制整備を進める。
また、薬用作物等の地域特産作物について、防除体系を確立する事業に新規で2600万円を計上。薬用農薬の適用拡大に必要な薬効薬害・作物残留試験等の実施や、IPM(多様な防除技術を組み合わせた病害虫防除体系)を活用した標準的な病害虫防除体系の確立に対する支援も行う。
こうした取り組みにより、薬用作物の試験栽培等を通じて新たな産地を創出し、国内生産量を10年度の900トンから18年度までに1800トンと2倍に拡大する政策目標も打ち出した。19年度としていた概算要求段階から目標を1年前倒ししている。