オピオイド誘発性の便秘症、疼痛管理の阻害要因に
塩野義製薬株式会社は2月22日、同社が自社創製品として初めて日・米・欧3極同時に開発を進めている末梢性μオピオイド受容体拮抗薬「ナルデメジン(一般名)」の第3相臨床試験(COMPOSE I)の良好な試験結果を、米国パームスプリングスで開催された第32回米国疼痛医学会(AAPM 2016)で公表したと発表した。
オピオイド鎮痛薬は脳内のオピオイド受容体に作用して強い鎮痛作用を示す一方で、腸管のμオピオイド受容体に作用することで腸の活動を低下させ、オピオイド誘発性の便秘症(OIC)を引き起こす。OICは患者のQOLを低下させるだけではなく、オピオイド鎮痛薬治療の中断につながるなど、疼痛管理の阻害要因にもなる症状だ。
ナルデメジンは、消化管に存在するμオピオイド受容体に結合し、オピオイドの末梢性作用に拮抗することにより消化管でのオピオイドの副作用を緩和する、末梢性μオピオイド受容体拮抗薬(Peripherally Acting Mu-Opioid Receptor Antagonist:PAMORA)。同社では、今年度の目標であるナルデメジンの日米同時製造販売承認申請の実施に向け、全社を挙げて準備を進めているという。
主要評価項目でプラセボを有意に上回る
ナルデメジンの一連の第3相臨床試験(COMPOSEプログラム)のうち、1つ目のグローバル試験であるCOMPOSE Iは、非がん性慢性疼痛の治療のためにオピオイド鎮痛薬を服用中で、OICを呈する患者を対象に、ナルデメジンの有効性・安全性についてプラセボとの比較を行ったもの。主要評価項目は、1週間あたりの自発的排便(頓用緩下薬投与後24時間以内の排便を除く排便)回数が3回以上かつ排便回数のベースラインからの変化量が1回以上を満たす週が、治療期12週間のうち9週間、かつ最終4週間のうち3週間を占める被験者の割合(レスポンダー率)で、ナルデメジン群で47.6%とプラセボ群の34.6%を有意に上回った。
また、治療期(12週間)最後の2週間における1週間あたりの残便感を伴わない自発的排便回数やいきみを伴わない自発的排便回数のベースラインからの変化量など、すべての副次的評価項目でナルデメジン群はプラセボ群を有意に上回った。
ナルデメジンの忍容性は概ね良好であり、5%を超える有害事象は腹痛(ナルデメジン群6.3%に対してプラセボ群1.8%)と下痢(ナルデメジン群6.6%、プラセボ群2.9%)の消化器症状のみ。なお、ナルデメジンの投与によって、オピオイドの鎮痛効果への影響は認められなかったとしている。
同試験の良好な成績は、今後ナルデメジンがOICを緩和する有望な治療選択肢となり、オピオイド鎮痛薬による疼痛管理に大きく貢献する期待が高まったことを意味する、と同社は述べている。
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・塩野義製薬株式会社 プレスリリース