国内の患者数3万5000人の膵臓がんなど、固形がんを対象に
富士フイルム株式会社は2月18日、米国において、抗がん剤「FF-10502」の臨床第1相試験を開始したと発表した。これは、膵臓がんなどの固形がんを対象としたもの。今後、がん領域で世界トップレベルの研究・治療施設である米国テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターで本格的に実施し、同試験を加速させていく予定。
膵臓がんは、消化器のがんの中でも特に治癒の難しいがんで、有効な治療法が限られており、予後不良となることで知られている。現在、膵臓がんの患者は米国で約5万人、日本では約3万5000人と推定されている。
同社によると、同剤は、がん細胞の核内に入り込みDNAの合成を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制する抗がん剤。膵臓がんを対象としたマウスモデル実験では、既存の薬剤と比較して、同等の安全性でより強く腫瘍組織を退縮させるという高い治療効果を示した。さらに、患者由来の細胞を用いた実験では、膵臓がんだけでなく、肺がん、卵巣がん、膀胱がんといった広い範囲の固形がんにも強い効果があることが確認された。
合成プロセスを効率化して、コスト低減に成功
同剤は、合成に多くのプロセスが必要な独特の化学構造を有するため、生産コストが高く、実用化が困難だったが、同社が写真フィルムの開発で培ってきた高い化学合成力・設計力を生かして、合成プロセスを効率化することで、コスト低減を成功させている。
MDアンダーソンがんセンターは、年間1万人以上の治験参加患者数があり、約2万人のスタッフを有する、世界トップレベルの総合がんセンター。同社は、同センターの世界最大規模の治験実施機能を活用して、同剤の臨床第1相試験を実施して安全性と初期の有効性を確認し、今後は同センターでの臨床試験を加速させ、早期の承認取得を目指していくとしている。
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・富士フイルム株式会社 ニュースリリース