ドセタキセルと比較して低い有害事象発現率
ヒト型抗ヒトPD-1(programmed cell death-1)モノクローナル抗体「オプジーボ(R)点滴静注20mg、100mg」(一般名:ニボルマブ)が、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」に対する効能・効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを受けて、小野薬品工業株式会社とブリストル・マイヤーズ株式会社は2月17日、プレスセミナーを開催。九州大学病院呼吸器科教授で、同病院副病院長の中西洋一氏が「がん免疫療法で変わる肺がん治療」と題して講演を行った。
九州大学病院呼吸器科教授の中西洋一氏
「(ニボルマブが登場するまで)がんに対する免疫力を高める試みはことごとく失敗してきた」と中西氏。PD-1とPD-1リガンドの経路を阻害する免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブは、眠った免疫を目覚めさせる、というこれまでとは異なるアプローチでがんを抑える薬である、と説明した。
さらに、中西氏は、ニボルマブが従来の抗がん剤の標準治療薬(ドセタキセル)と比べて安全性が高いことを強調。全有害事象の出現率は、ドセタキセルの86%に対して、ニボルマブは58%。特に、貧血、白血球減少、好中球現象、発熱性好中球減少症、脱毛症で顕著に低かった、と語った。
副作用マネジメントがさらなる課題のひとつに
ただし、日本肺癌学会からの提言にもあるように、ニボルマブはすべての患者に有効な“夢の新薬”ではない。「今後の課題は、バイオマーカーの探索、副作用マネジメント、そして他剤との併用です」と中西氏。有害事象の発生は少ないものの、肺臓炎などの免疫関連の有害事象は複数の臓器で発生しており、診療科、職種問わずに横断的に対応していくことが重要であるとした。
他剤との併用では、現在、腎細胞がん、悪性黒色腫、固形がんなどを対象として、ニボルマブと免疫チェックポイント阻害薬の併用など複数の臨床試験が実施されており、中西氏は、「今後10~15年の世界のメーンストリームは免疫チェックポイント阻害薬であることは間違いないと思っている」と話した。
日本で初めて肺がん治療で承認されたがん免疫療法薬であるニボルマブ。中西氏は、講演の最後に「新しい薬ができてすばらしい。ですが、私たちにとっては新たな悩みの種、取るべき対策が出てきた」と、あくまで慎重に投与する必要があるとくぎを刺して締めくくった。