肺胞蛋白症、低ガンマグロブリン血症、樹状細胞欠損の1歳女児
東京医科歯科大学は2月16日、同大医学部付属病院小児科の森尾友宏教授と金兼弘和准教授らのグループが、これまで治療が困難であった稀で重症の先天性肺胞蛋白症患児に対する造血細胞移植を2015年7月に実施、世界で初めて成功したことを発表した。これにより、患児の症状は改善し、状態良好にて同年11月に退院している。
画像はリリースより
造血細胞移植とは、血液をつくる元になる造血幹細胞を含む造血細胞を患者に移植すること。ドナーソースによって骨髄移植、臍帯血移植、末梢血管細胞移植に分けられ、移植後は長期間にわたり免疫抑制剤の投与を必要とする。
同大学によると、造血細胞移植を受けたのは埼玉県在住の1歳女児。生後5か月時にRSウイルスによる重症肺炎発症を契機に原因不明の免疫不全症ならび間質性肺炎と診断され、精査加療の目的で2015年3月に同院に紹介入院となった。精査の結果、肺胞蛋白症、低ガンマグロブリン血症、および樹状細胞の欠損が明らかとなった。肺胞蛋白症の原因は、樹状細胞の欠損によるものと考えられ、造血細胞移植によって治癒が望めると判断した。
東京医歯大難治疾患研究所と共同で原因解明へ
同院では、2015年5月にHLA1座不一致臍帯血移植を行ったが、生着不全となった。そこで、同年7月にHLAが3座不一致の父親をドナーとして骨髄移植を実施。移植後、重症の急性移植片対宿主病を始めとする様々な合併症が生じたが、主治医チームの治療によって回復し、11月に退院した。移植後は樹状細胞が回復し、肺胞蛋白症が改善したとしている。
患児でなぜ樹状細胞が欠損していたのかは不明で、低ガンマグロブリン血症のメカニズムも不明。現在、同院小児科の免疫グループでは、同大学難治疾患研究所生体防御学分野の樗木俊聡教授らのグループとともに原因解明に取り組んでいる。原因が明らかになれば、より安全で効果的な治療法の開発につながるものと期待される。
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