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4年制併設大、方向性を模索―経過措置廃止で6年制定員増も

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2016年02月19日 PM12:00


■特色に応じて歩みは多様化

4年制課程を卒業し、修士や博士課程を経た学生に条件付きで薬剤師国家試験の受験を認める経過措置が2018年度の入学者から廃止されることを受け、4年制課程を併設する国公立大学薬学部のうち、いくつかの大学はその対策を具体的に検討している。現時点では、4年制課程を廃止し6年制課程に統一することを決めた岐阜薬科大学のような抜本改革に同調する動きは見られないものの、6年制課程の定員増を検討している大学は複数ある。一方で、この動きを静観する大学も少なくない。さらに、経過措置廃止を契機に、4年制課程での研究者育成の姿勢を強める方向性も想定され、各大学は当面、特色や役割に応じたそれぞれの道を歩むことになりそうだ。

多くの私立薬系大学は6年制課程のみを設置し、4年制課程を併設するのは国公立大学薬学部が中心だ。経過措置は、17年度までの薬学部4年制課程の入学者に対して、同課程を卒業して修士や博士課程を修了し、医療薬学系科目や実務実習などの単位を追加で履修した場合に国試受験資格を与えるもの。経過措置の廃止を受け、日本薬学会の柴崎正勝前会頭が主導し、数年前に経過措置の延長に向けて関係者の意見を統一しようと試みたが、実現しなかった経緯がある。

18年度以降の4年制課程入学者は、経過措置に基づく国試受験資格を得られなくなるため、大学によっては、受験生から見た4年制課程の魅力が薄れる可能性がある。

4年制課程の定員比率が高く当初から研究者育成を主軸に据えている旧帝大系の国立大学に比べ、6年制課程の定員比率が高く薬剤師育成の役割も強い地方の国公立大学は経過措置廃止の影響を受けやすく、対策を検討する必要性も高いと見られる。

実際に、地方の複数の大学では、経過措置廃止を契機に薬学部の将来像を学内で具体的に検討している。選択肢の一つは6年制課程の定員増。4年制課程に進んだ学生が経過措置を活用して薬剤師の免許を取得する事例があるため、その受け皿を整備したい考えだ。

ただ、この場合、実務家教員や実務実習施設の確保、文部科学省との調整などが課題になる。このほか、4年制課程卒業後の6年制課程への編入を実現しやすくする体制の整備も選択肢になるという。

これらの大学は、岐阜薬大の取り組みを方向性の一つと評価し、中には具体的な選択肢として検討している大学もある。ただ、「検討は行うが実現の可能性は低い」「公立大学だからできた。国立大学が4年制課程を残すよう主張した経緯から考えても、国立大学では4年制課程を廃止し、6年制課程に一本化するのは難しい」などの見方は強く、岐阜薬大のような抜本改革に同調する動きは現時点では見られない。

とはいえ、「岐阜薬大の動向は注目を集めるだろう。例えば、それで偏差値が上がる、受験者数が増えるなどのことがあれば、追随する大学も出てくるのではないか」との声もある。

一方、経過措置廃止を静観する国公立大学も少なくない。当初から、研究者を育成する学科として4年制課程を位置づけているため、経過措置が廃止されたところで具体的な対策を検討する必要はないという。

さらに、経過措置廃止を契機として、4年制課程で研究者を育成する姿勢を今以上に強める大学も出てくるだろう。薬剤師不足はいずれ終息し、将来は供給過多に陥る可能性がある。薬剤師の育成は私立大学に委ね、4年制課程で研究者を育成する役割を強める方向性はあり得る。今後、そのような動きが表面化しそうだ。

経過措置が適応されるのは17年度の入学者まで。何らかの抜本的な変革を実行する際には、受験生への周知が求められる。18年度に入学する受験生に周知するスケジュールを考慮すると、4年制課程を併設する薬学部のあり方について、今年の夏ごろまでに各国公立大学の方針がはっきりする見通しだ。

このような短期的な対策とは別に、中長期的な視野で薬学部をどう位置づけるかをしっかり議論すべきという声もある。ある大学教員は「個人的には、医学部と同じように、同じ教育課程で研究も臨床も両方行うのはあり得ると思う。各大学が個々に考えることではなく、全体として中長期的な議論が必要ではないか」と述べ、岐阜薬大の取り組みを題材に議論が活性化することを期待している。

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