FHヘテロ接合体患者の患者数24~60万人
国立循環器病研究センターは2月13日、同センター病態代謝部の斯波真理子部長、堀美香上級研究員らの研究グループが、家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体と診断された患者の遺伝子解析を行い、遺伝子変異タイプの違いと症状の重篤性との関係を明らかにしたと発表した。
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研究グループによると、FH患者は出生時から、LDL-C値が高く、皮膚や腱に黄色腫が出現するという特徴がある。そして、コレステロールの蓄積により動脈硬化が進行し、弱年齢で冠動脈疾患に罹患する確率が高くなる。FHヘテロ接合体は、国内では200~500人に1人の頻度で見られ、24~60万人の患者がいると推定されている。
FHは常染色体優性遺伝病であり、血中LDLを取り込むLDL受容体遺伝子(LDLR)や、LDLRの分解に関わる遺伝子、PCSK9の変異が原因として報告されている。今回の研究では、FHヘテロ接合体患者の遺伝子解析により、日本人FH患者の遺伝子変異の特徴を調べるとともに、遺伝子解析が重症患者の選別と有効な治療法の選択につながる可能性について考察したとしている。
PCSK9 V4IとLDLRの両方の遺伝子変異で冠動脈疾患罹患の可能性高く
国循で臨床的にFHヘテロ接合体と診断された患者269人の採血し、LDLR及びPCSK9について遺伝子解析を行ったところ、53%にLDLR変異が、13%にPCSK9変異が認められた。また、LDLR変異とPCSK9のうちV4I変異の両方を有する患者(全体の3.6%)は、LDLR変異のみの患者よりLDL-C値が高いこと、狭心症や心筋梗塞といった冠動脈疾患の頻度も高くなることが判明した。
つまり、2つの遺伝子変異が組み合わされるとLDL-Cが増加し、冠動脈疾患に罹患する可能性が高くなることがわかった。このことから、FH患者の遺伝子解析はFHの診断だけでなく重症度を早期に判断する方法としても有用であるとしている。
今回の研究により、FH患者に対して遺伝子解析を行うことでLDLR変異とPCSK9 V4I変異の両方を持つ極めて重症なFHを早期に診断することができることが明らかになった。今後は、遺伝子解析結果を患者の早期診断や重症度に合った治療法の選択に利用することで、FH患者の予後改善に貢献することが期待できると研究グループは述べている。
なお、研究内容は、「Journal of Clinical Lipidology」オンライン版に掲載された。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース