スタチンの効果不十分なFH、高コレステロール血症に適応
「悪玉コレステロール」と呼ばれるLDL-Cを血中から取り除く肝臓の働きを低下させるタンパク質、PCSK9(ヒトプロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)。その国内初の阻害薬となる、アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社の「レパーサ(R)皮下注」(一般名:エボロクマブ(遺伝子組み換え))が1月に製造販売承認を取得。間もなく臨床現場に登場する。
国立循環器病研究センター研究所
病態代謝部長の斯波真理子氏
レパーサは、HMG-CoA還元酵素阻害剤(スタチン)で効果不十分な、家族性高コレステロール血症(FH)または高コレステロール血症を効能・効果とした皮下注射剤。同社によると、スタチンなどの脂質低下療法にレパーサを追加した複数の国内第3相試験において、LDL-C値の顕著な低下が見られたとしている。心血管イベント発症リスクの高い患者の約半数でLDL-Cの目標値が達成されていない現状において、レパーサは重要な治療選択肢の1つになると期待されている。
レパーサの製造販売承認を受けて、同社は2月8日に都内でプレス・カンファレンスを開催。国立循環器病研究センター研究所 病態代謝部長の斯波真理子氏が、FHについて講演を行った。
FH患者は平均 男性46.5歳、女性58.7歳で心筋梗塞発症
FHは、LDL受容体関連遺伝子変異による遺伝病で、血清総コレステロール値は230~500mg/dLと高く、皮膚および腱黄色腫といった症状がある。200~500人に1人と遺伝性代謝疾患の中では高い頻度で認められるが、「早期性動脈硬化症や冠動脈疾患の発症リスクが高いことが臨床上の大きな課題」(斯波氏)となっている。
動脈硬化の進行速度が速いFH患者が心筋梗塞を起こす平均年齢は男性46.5歳、女性58.7歳で、FH患者以外の平均と比べ10年以上早い。また、食事療法が効きにくい、動脈硬化により血管が細くなりやすい、といった特徴も見られる。しかし斯波氏は、FHの診断率がオランダの71%、ノルウェーの43%などと比べ、日本国内では1%以下と非常に低いことを指摘。早期診断、早期治療の重要性を訴えた。
「FHは、早期に的確な診断をされ、適切な治療を行うことにより、確実に予後を良くすることができます」と斯波氏。FHが広く世間に知られるとともに、確実に診断されることが望まれる。