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粘膜の死細胞が免疫細胞刺激し、難治疾患の発症促進-筑波大

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2016年02月12日 PM01:00

粘膜組織でCD300aを発現する免疫細胞探索

筑波大学は2月9日、同大医学医療系・生命領域学際研究センターの渋谷彰教授、小田ちぐさ助教らの研究グループが、腸管、皮膚、気管などの粘膜の死細胞が、粘膜組織の免疫細胞を刺激して、炎症性腸疾患やアトピー性皮膚炎、喘息の発症を促進することを世界で初めて発見したと発表した。研究成果は、英国科学誌「Nature Immunology」のオンライン速報版に2月9日付けで掲載された。


画像はリリースより

腸管、皮膚、気管などの粘膜は上皮細胞で覆われ、外界からの異物や病原体の侵入を防いでいる。粘膜では、毎秒100万個ともいわれる数の上皮細胞が常に死に絶えていく一方、新しい上皮細胞が新生され、粘膜が維持されている。死んだ上皮細胞は、皮膚では垢、腸では便、気管では痰などとして排泄されていくが、これまで、これらの死細胞には特に何の役割もないと考えられていた。

研究グループは、2003年に免疫細胞の細胞膜上に発現するCD300aという蛋白分子を世界に先駆けて発見。2012年にはCD300aはフォスファチジルセリンと特異的に結合する蛋白分子であり、その結果、免疫細胞に信号を伝え、免疫細胞の活性化を抑制することを明らかにしている。そこで、粘膜で常に生じている多数のアポトーシスを起こした上皮の死細胞は、単に排泄されるだけではなく、CD300aを介して免疫細胞と結合し、何らかの働きを持っているのではないかと推測した。

今回の研究では、粘膜組織でCD300aを発現する免疫細胞を探索したところ、腸や気管では樹状細胞、皮膚ではランゲルハンス細胞と呼ばれる免疫細胞がCD300aを発現すること、これらの免疫細胞がアポトーシスで死んだ上皮細胞と接着していることを突き止めた。さらに、粘膜上皮の死細胞が、CD300aを介して皮膚、腸管、気管などのいずれの粘膜組織においても、免疫反応を抑制する働きをもつ制御性T細胞が有意に増加していることを明らかにした。

炎症性腸疾患やアレルギー疾患の有用な治療法開発につながる可能性

また、CD300a遺伝子欠損マウスの粘膜組織で増加した制御性T細胞がどのような働きを持つかを検討。一般に、制御性T細胞は免疫細胞の活性化を抑制する機能を有することから、免疫細胞の活性化により引き起こされる腸管、皮膚、気管などの粘膜での炎症病態である腸炎、、喘息について解析した。その結果、炎症性腸炎を誘導した野生型マウスでは20%以上の体重減少が見られたのに対し、CD300a遺伝子欠損マウスではおよそ5%程度しか見られず、有意に軽度の炎症病態を示した。、喘息モデルを誘導すると、野生型マウスと比較し、CD300a遺伝子欠損マウスで、有意に軽度の病態を示した。

研究成果により、粘膜の死細胞が、免疫細胞に発現するCD300aを介して制御性T細胞を減少させ、これらの難治疾患の発症を促進させることが明らかとなった。CD300aの働きを抑制するMFG-E8や抗体医薬などの薬剤を開発することで、これらの難治疾患の革新的な治療につなげることが期待でき、これまで全く知られていなかった新しい発想の炎症性腸疾患やアレルギー疾患の有用な治療法となりうるものと考えられると研究グループは述べている。

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