研究グループ、TR1ナノアゴニスト発現ビフィズス菌を開発
シンバイオ製薬株式会社は2月8日、帝京平成大学との間で、がん細胞やがん幹細胞表面に高発現しているTRAIL-R1を標的として、効率的に抗がん作用を発揮するナノアゴニスト分子(TTR1ナノアゴニスト)を用いた革新的な抗がん治療薬の開発に関する共同研究開発契約を締結したと発表した。
画像はリリースより
同社はこの契約に基づき、同剤の臨床試験開始に向けた前臨床試験にかかる業務を同大学と協働で進めていく。また、開発の進捗に応じ、同大学から同剤の全世界における開発・製造・商業化に関する独占的ライセンスを取得する権利を取得したとしている。
同社によると、帝京平成大学薬学部の石田功教授の研究グループは、TTR1ナノアゴニストを開発し、このTTR1ナノアゴニスト発現機能を薬剤送達技術として、嫌気性菌であるビフィズス菌に組み込むことで、TTR1ナノアゴニスト発現ビフィズス菌を開発した。動物モデルにおいて、TTR1ナノアゴニスト発現ビフィズス菌は、低酸素状態にあるがん組織において選択的に増殖し、抗がん作用及び安全性が確認されている。
画期的な抗がん治療薬の臨床研究開始目指す
TRAILとは、腫瘍壊死因子TNFファミリーのひとつで、その受容体であるTRAIL-R1、TRAIL-R2に結合し、受容体を3量体化した後、細胞にアポトーシスを誘導する。通常の抗TRAIL-R1抗体では3量体化が困難であったため、アポトーシス誘導能が弱かったが、通常の抗体と異なり、アルパカなどラクダ科の抗体は単一ドメインからなり、改変が容易である。抗原認識部位を切り出したものはsdAbと呼ばれ、通常の抗体より分子量が小さく安定性、組織への浸潤能にも優れている。同剤に用いられるsdAbの3量体(TTR1:Trivalent anti-TRAIL-R1の略号)はアゴニスト作用を持ち、アポトーシスを誘導することから、TTR1ナノアゴニストと呼ぶという。
また、ビフィズス菌はヨーグルトなどの飲料に含まれ、腸内に広く存在し酸素のない環境を好んで生息。すい臓がん、悪性胸膜中皮腫などの固形がんをはじめとする多くのがんは酸素の少ない環境にあることから、TTR1ナノアゴニスト分子を発現するビフィズス菌を静脈投与すると、ビフィズス菌はがん組織選択的に生息を開始し、TTR1ナノアゴニスト分子をがん組織内で発現することによって効果的にがん細胞を死に至らしめるとされている。
同社は、このビフィズス菌とTTR1ナノアゴニスト分子を組合せた今までにない作用機序を持つ画期的な抗がん治療薬の臨床試験開始に向け、今後も同大学と共同で研究開発を進めていくとしている。
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