バレニクリン用いた禁煙治療1年後にGERDとQOLへの影響検討
大阪市立大学は2月5日、同大学医学研究科消化器内科学の藤原靖弘准教授らが、同科総合医学教育学、上本町わたなべクリニックとの共同研究により、禁煙治療が胃食道逆流症(GERD、Gastro-Esophageal Reflux Disease)に有効であることを日本で初めて明らかにしたと発表した。この研究は米国のオンライン科学誌「PLOS ONE」に2月5日付けで公開された。
画像はリリースより
GERDは、一般的には「逆流性食道炎」と呼ばれ、胸やけや呑酸を主症状とし、QOLが低下する病気。日本では1990年代より増加している頻度の高い消化器疾患のひとつで、現在、成人の約10~20%がこの疾患を患っていると推定されている。
喫煙はさまざまな病気との関連が指摘されており、GERD患者では、喫煙が食道運動機能を低下させ逆流を増加させることから、一般的に禁煙が勧められている。しかし、その根拠は乏しい現状があった。GERDと喫煙の関係に関しては、これまでに数多く報告されているが、禁煙がGERDにどのような影響を及ぼすのかについての前向き研究はほとんどなかったとしている。
日本では、ニコチン受容体作動薬のバレニクリンが禁煙治療に汎用されている。禁煙を志す患者はこの薬を12週間内服して治療を行う。そこで今回研究グループは、バレニクリンを用いた禁煙治療1年後に、GERDおよびQOLに及ぼす影響について検討した。
薬使用せず、禁煙含めた生活習慣の改善のみで病気克服の可能性も
禁煙目的に受診した患者を対象に、初診時に喫煙習慣、GERD症状(Fスケール)および健康関連QOL(SF-8)に関する質問紙票を記入してもらった。12週間の禁煙治療を完遂できた患者を対象に、1年後に禁煙の成否と初診時と同様の質問紙票を用いて調査し、 GERD症状や健康関連QOLの変化について検討を行った。
最終的には191人が解析対象となり、内訳は禁煙成功群が141例、禁煙失敗群が50例だった。禁煙成功群ではGERD症状が約43%で改善したのに対し、禁煙失敗群では約18%のみ改善し、これらには有意に差があった。症状の程度を示すFスケール・スコアも禁煙成功群のみ有意に低下し、症状の程度も改善した。健康関連QOLは禁煙成功群でのみ改善していたという。
現在、GERD患者では胃酸分泌抑制薬が第一選択だが、長期服用が必要な患者では副作用も懸念されている。今後、禁煙治療により薬剤が中止できるかどうかを前向きに検討し、将来的には禁煙を含めた生活習慣の改善のみで病気を克服できる可能性を考えていると、研究グループは述べている。
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