アルコール多飲歴のある人に生じやすい難治性疾患
京都大学は2月2日、難病である特発性大腿骨頭壊死症において、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)含有ゼラチンゲルを壊死部に投与し骨再生を促す臨床試験10例の良好な結果を発表した。この研究は、同大学医学部附属病院整形外科の松田秀一教授と黒田隆助教らのグループによるもの。研究成果は、国際誌「International Orthopaedics」に掲載された。
画像はリリースより
同大学によると、特発性大腿骨頭壊死症は、骨頭の壊死部が圧潰すると、歩行困難となり、ADLが著しく障害される股関節の難治性疾患。背景因子として、SLE(全身性エリテマトーゼス)などの膠原病の治療でステロイド治療を受けた人や、アルコール多飲歴のある人に生じやすく、20~30代の若い世代が多く含まれる。骨頭が圧潰した場合、若年者でも人工股関節の手術が行われているが、耐用年数や感染、脱臼リスクなどの問題点があり、再生医療に大きな期待がかかっていた。
bFGF含有ゼラチンゲル投与の有効性検証する治験開始
これまで同大学整形外科では、大腿骨頭壊死症の動物モデル作製、bFGFゼラチンハイドロゲルを用いたドラッグデリバリーシステムの構築、動物モデルでのbFGFによる壊死部の骨再生などの基礎研究を行ってきた。研究グループは、その成果をもとにトランスレーショナルリサーチとして、2013年3月より、bFGFを経皮的に壊死部に投与する臨床試験10例を行い、短期ではあるものの、良好な結果を得たとしている。
2016年1月28日からは、日本医療研究開発機構(AMED)での研究資金を用いて、多施設共同医師主導治験「特発性大腿骨頭壊死症におけるbFGF含有ゼラチンハイドロゲルによる壊死骨再生治療の開発」を実施。この医師主導治験は、同大学医学部附属病院臨床研究総合センター(iACT)を中心とした4大学の共同チーム(岐阜大学、東京大学、大阪大学、京都大学)が骨頭圧潰前の64人の患者を対象として、有効性と安全性を検証し、早期の臨床応用、標準的治療となることを目指しているもの。
この治験により、bFGF含有ゼラチンゲルの投与による有効性が示されれば、特発性大腿骨頭壊死症で悩んでいる多くの患者の治療に役立ち、また、多くの施設で実施、普及されることが期待される。
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・京都大学 研究成果