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BDNF遺伝子変異型、発達期に認知機能や脳体積に好ましい影響-東北大

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2016年02月05日 AM06:00

アジア人で変異型多いが、子どもの研究少なく

東北大学は2月2日、小児の横断および縦断追跡データを用いて、(Brain Derived Neurotrophic Factor)遺伝子多型が、認知機能や脳形態の変化とどう関連しているかを解析し、BDNF遺伝子の変異型が発達期の脳の後頭-頭頂領域の体積や処理速度に好影響を与えていることを明らかにしたと発表した。


画像はリリースより

同大学加齢医学研究所・認知機能発達寄附研究部門は、磁気画像共鳴装置(MRI)を用いて、小児の脳形態や脳機能の発達を明らかにするとともに、遺伝子がそれらに影響を与えるかを解明している。今回の研究成果は、同部門の橋本照男助教、川島隆太教授らの研究グループによるもの。

BDNFは神経細胞に栄養を与えるタンパク質で、欧米の研究ではその生成に関わる遺伝子の変異型をもつ人ではそのタンパク質の生成量が少なくなり、精神疾患を含め多くの悪影響があるとされてきた。BDNF生成を制御する遺伝子には変異型があり、アミノ酸のValine(Val)がMethionine(Met)に代わることで、BDNF生成量が減ると考えられている。アジア人にこの変異型を持つ割合が多いが、ヒトの子どもにおける研究は少なかった。

研究グループは、変異型が多い日本人の健康な小児において、BDNF遺伝子多型が脳形態や認知機能に与える影響を解明することを目的として、5~18歳に知能検査とMRI撮像を実施。3年後にも知能検査とMRI撮像を行い、唾液から遺伝子を採取した。遺伝子型は生涯変わらないもので、BDNF遺伝子の野性型(正常)はVal/Val、変異型がVal/MetとMet/Met。これら3群の比較を行った。

知能検査とMRI撮像行った185人のデータ解析

初回と2回目の両方のデータが揃っている185人の解析結果によると、Met/Metの子は初回、2回目ともに高い処理速度指数を示し、後頭-頭頂領域の体積が大きいことがわかった。また、初回ではVal/Valの子のほうが大きい部位もあったが、2回目にはその差がなくなっており、3年間にMet/Metの子のほうがよりその部位の増大があったことが明らかになった。処理速度と脳体積の直接的な関係を調べたところ、初回において、処理速度指数が高いほど小脳の前部が大きかった。2回目では処理速度指数と関係が強い脳部位はなかった。

また、各群を低年齢群(5~11歳)と高年齢群(12~18歳)に分けて解析したところ、低年齢群ではその脳部位がより大きくなり、高年齢群ではむしろ小さくなる傾向が見られ、発達期における脳構造の再構築がVal/Met群で示唆された。研究成果より、BDNF遺伝子の変異型を持っていても、少なくとも発達期において悪影響はあまりなく、むしろ認知機能の一部や脳体積に好ましい影響があることが示された。

この研究は、脳画像解析、大規模なデータ、数年の期間をおいた縦断解析といった手法を用いて、脳の発達や可塑性に重要な影響があるタンパク質合成に関わる遺伝子と、子どもの脳構造、認知機能との関係を新たに明らかにした点などから、画期的な成果と評価され、1月31日発行の英国科学雑誌「Cerebral Cortex」に掲載された。

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