BRCA 1/2 またはATM遺伝子変異を有するmCRPC患者の単剤療法で
英国のアストラゼネカは1月28日、FDAが経口ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤「Lynparza(TM)」(一般名:オラパリブ)に対し、タキサンベースの化学療法および少なくとも1種類の新規ホルモン製剤(アビラテロンまたはエンザルタミド)による前治療を受けたBRCA 1/2またはATM遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者の単剤療法として画期的治療薬指定(The Breakthrough Therapy Designation)を付与したことを発表した。
前立腺がんは、mCRPCに進行すると、その治療は延命、病勢進行の遅延、症状および生活の質の改善などが中心となる。化学療法および新規ホルモン製剤による治療を受けた患者の全生存期間は10か月。また、BRCA1、BRCA2、ATMの体細胞もしくは生殖細胞遺伝子変異を有するmCRPC患者に対する標的治療は現在存在しない。
オラパリブは、革新的なファースト・イン・クラスの経口ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤で、DNA修復経路に異常をきたしたがん細胞に特異的に作用し、細胞死を誘導。この作用機序により、同剤は、DNA修復に異常をきたした一連の腫瘍型に作用すると考えられている。
重篤かつ生命脅かす病態のmCRPC患者治療で大幅な改善示唆
FDAから画期的治療薬指定を受けるには、当該医薬品が既存の治療薬と比較して、少なくともひとつの臨床的に重要な評価項目で、大幅な改善を示す予備的な臨床エビデンスが必要。オラパリブは、バイオマーカーにより選択された重篤かつ生命を脅かす病態であるmCRPC患者群の治療で、オラパリブ単剤療法が既存の治療薬と比較して大幅な改善が示唆されたTOPARP-A第2相試験の結果に基づき、画期的治療薬に指定された。
この試験結果は2015年米国がん学会で発表され、2015年10月には「The New England Journal of Medicine」に掲載された。同試験において、オラパリブがDNA損傷修復メカニズムに異常をきたした前立腺がん患者に奏効が認められたとしている。
同剤がこの患者群において画期的治療薬指定を受けたことにより、FDAは申請データを受領から60日以内に迅速に審査することになる。同社は、一日も早くオラパリブを新たな治療選択肢として導入するため、FDAと緊密に連携していきたいと述べている。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース