女性に多い疾患で、日本人の2%に発症
京都大学は2月1日、思春期特発性側弯症(AIS)の原因遺伝子LBX1が側弯を引き起こす仕組みを解明したと発表した。この研究は、同大学再生医科学研究所の郭龍研究員、開祐司同教授、広島大学医歯薬保健学研究院の宿南知佐教授、山下寛助教、金沢大学学際科学実験センターの堀家慎一准教授、広島大学理学研究科の山本卓教授、理化学研究所の池川志郎チームリーダーらの研究グループによるもの。研究成果は米国の科学雑誌「PLOS Genetics」オンライン版に1月29日付けで掲載された。
画像はリリースより
脊柱側弯症は、脊骨が側方に曲がり捻れる病気。発生頻度が高く、進行すると治療が難しいため、法律で検診を行うことが定められている。脊柱側弯症のほとんどは、原因不明(特発性)のAISと呼ばれるタイプで、10歳以降の成長期に発症するAISは、特に女性に多い疾患で、日本人の約2%に見られる。AISは、進行すると腰背部痛や呼吸機能障害を起こし、装具や手術療法が必要となるため、思春期の患者とその家族には非常に大きい肉体的、精神的、経済的な負担がかかる。
研究グループによると、理化学研究所統合生命医科学研究センターの池川志郎骨関節疾患研究チームリーダーらは、2011年にゲノムワイド相関解析(GWAS)によって、AISと強く相関する一塩基多型(SNP)rs11190870を発見。rs11190870の近くには、LBX1という遺伝子が存在するが、AIS発症との機能的な関連性は、まだ分かっていなかった。AISの病態を理解するには、LBX1やrs11190870がどのようにAISの発症に関わっているかを個体レベルで解明することが望まれていた。
AIS治療に有効な分子発見につながる可能性
今回、研究グループは、Chromosome conformation capture法やLuciferase法による解析によって、rs11190870を含むゲノム領域がヒトLBX1遺伝子のプロモーター領域と相互作用し、LBX1遺伝子の転写を上昇させることを明らかにした。
また、ヒトLBX1とそのゼブラフィッシュ相同遺伝子(lbx1a、lbx1b、lbx2)の過剰発現が、ゼブラフィッシュの体軸変形を引き起こす原因になることを示した。さらに、lbx1bをゼブラフィッシュの筋肉以外の内在性発現領域でモザイク状に発現させると、脊椎骨の奇形を伴う側弯と脊椎骨の形態異常を伴わないAISによく似た側弯が誘導されることが分かったとしている。
今後は、このモデルを用いて、LBX1 LBX1の過剰発現がヒトのAISをどのように起こすかをさらに調べていく必要があるとしている。最近では、ゼブラフィッシュを活用したin vivo ハイスループットスクリーニングによる新しい薬の探索が世界中で行われており、今回の研究成果は、将来的には、AISの治療に有効な分子の発見につながる可能性があると研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果