日本総合病院精神医学会の専門医136人に
医療経済研究機構は2月1日、せん妄治療の第1選択薬に対する専門医の評価をまとめた研究成果を発表した。この研究は、同機構の奥村泰之主任研究員が日本総合病院精神医学会せん妄指針改訂班として参画して行ったもの。研究成果は、1月18日付けで「International Psychogeriatrics」誌に掲載された。
画像はリリースより
せん妄とは、身体疾患により惹起される、精神や行動の障害。集中治療室の患者のうち48~83%がせん妄を発症し、それにより、人工呼吸器装着日数の遷延、入院期間の遷延、医療費の増大、認知症の発症、死亡などのリスクが増大するとされている。国内外の診療ガイドラインでは、せん妄を発症した患者の安全を保つために必要性がある場合は、抗精神病薬を使用することが推奨されているが、多様な臨床像のせん妄に対して、どの薬剤を第1選択薬として使用すべきかについて、専門医の間でも合意がない状態となっている。
そこで、研究では、日本総合病院精神医学会の専門医136人に対して、せん妄治療の第1選択薬関する調査を実施した。
過活動型せん妄に「リスペリドン」か「クエチアピン」
その結果によると、内服可能な状況において、糖尿病と腎機能障害を併存しない過活動型せん妄に対しては、68%以上の専門医が「リスペリドン」または「クエチアピン」を、糖尿病がなく腎機能障害を併存する過活動型せん妄に対しては、88%以上がクエチアピンを推奨。低活動型せん妄に対しては、半数以上の専門医が推奨する薬剤がないとしている。
内服不可能な状況においては、静脈ラインを確保している過活動型せん妄に対しては、67%以上の専門医が「ハロペリドール静注」の使用を推奨。低活動型せん妄に対しては、半数以上の専門医が推奨する薬剤がないと考えていることが明らかになった。
これらにより、多様な臨床像のせん妄治療の第1選択薬として、多くの専門医の合意を得られる薬剤と合意を得られない薬剤があることが示された。質の高い臨床試験が不足している状況下において、多くの臨床医は、過活動型せん妄に対してリスペリドンかクエチアピンの使用を推奨しており、これは、過活動型せん妄に対するリスペリドンとクエチアピンの有効性について、信頼のおける結論を導き出せる、より質の高い臨床試験が求められることを示唆しているとしている。
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・医療経済研究機構 プレスリリース