疑義照会の枠内から除外したのは、[1]剤形の変更[2]別規格製剤がある場合の処方規格の変更[3]無料で行う半割や粉砕[4]一包化[5]取り決め範囲内での湿布薬や軟膏の規格変更――の5項目。周辺薬局へのアンケート調査結果や院内の医師の意見を反映し、項目を策定した。
具体的には、薬局薬剤師が患者に十分説明し同意を得た上で、安定性や利便性向上のための変更に限って、▽錠剤を口腔内崩壊錠や細粒に変更▽2.5mg2錠を5mg1錠に変更▽一包化に変更▽軟膏25g2本を50g1本に変更――などの調剤上の調整を、薬局薬剤師に委ねている。いずれも疑義照会したところで、医師がその通りに了解するしかないような内容だ。ただ、FAXでの事後報告は必須にした。
和泉市薬剤師会の会員薬局に説明し、同会に加入する42薬局のうち36薬局とそれぞれ段階的に合意書を締結した。合意書には「以下の場合に原則として疑義照会を不要とする」として5項目を列記。病院長と薬局経営者、管理薬剤師による合意事項とし、合意した薬局を対象に昨年8月から取り組みを開始した。
同院の院外処方箋発行枚数は月間約9300枚。院外処方箋発行率は約96%。疑義照会は同院の薬剤師が仲介し、医師に確認して薬局に返答している。しかし調剤上の単純な変更の疑義照会も多く、医師への確認に時間を費やすため、医師の業務負担になっていたという。そこで京都大学病院の取り組みを参考に、業務の効率化や医師の負担軽減を図るため、PBPMの一環として体制を構築した。
実施後は、従来は疑義照会の枠内で対応していた件数のうち約20%は事後報告で済むようになり、医師や薬剤師の負担軽減につながった。待ち時間短縮に伴う患者サービスの改善などにもつながると期待している。今後さらに合意薬局を増やし、意見交換を経てプロトコルの追加や改訂を進めたい考えだ。
全国各地には、病院と近隣薬局間での口頭合意などによって疑義照会の範囲を決める事例も存在するが、連携の発展性は乏しい。疑義照会をテーマに一度PBPMの実施体制を構築できれば、他のテーマについてもPBPMの手法を使って連携強化を図れる可能性があり、その意義は大きい。2013年に京都大学病院がPBPMの一環として、合意書を交わした薬局を対象に8事項の疑義照会を不要とする運用を開始して以降、各地の病院に同様の取り組みが広がりつつある。