未就学児で限定的に有訴確率低下
医療経済研究機構は1月28日、「乳幼児医療費助成制度が子どもの健康へ与える影響に関する研究」の成果が、「Social Science & Medicine」誌に掲載されたことを発表した。この研究は、同機構の高久玲音主任研究員によるもの。
画像はリリースより
研究では、市区町村に対するアンケート調査で明らかになった1995~2010年の乳幼児医療費助成制度の拡充過程を、同期間の国民生活基礎調査とマッチングすることで、対象となった未就学児約12万人、就学児約14万人について、医療費助成の拡充が健康指標の改善をもたらしているか否かを検討した。
研究結果によると、医療費助成と有訴確率の関係について、未就学児では、医療費助成の対象となると、有訴率の低下が見られた。より詳細に分析結果を検討したところ、主に「熱」「咳」の有訴の減少により、全体の有訴確率が押し下げられていることが分かった。一方、喘息と関連があると考えられる「ぜいぜい」に対しては、効果がなかった。そのことから、未就学児で見られた健康効果は、慢性疾患に対しては限定的であると推察された。また、就学児では、医療費助成の対象となるかどうかは、有訴確率と相関していないことが明らかになった。
医療費助成と入院減少の相関見られず
医療費助成と入院確率の関係に関しては、未就学児、就学児ともに、すべての推定において、医療費助成が入院を減少させるという結果は得られなかった。
医療費助成により強い健康効果がもたらされる場合には、助成を拡大すると通院が容易になり、入院に至るような疾病の重症化を防ぐことができると期待される。しかし、研究結果は、未就学児と就学児ともに、強い健康への改善効果が見られなかったことを示唆したとしている。
なお、研究では、乳幼児医療費助成制度の効果を健康という観点から分析したが、医療費助成の目的は健康水準の向上だけではなく、例えば、病気の子どもを抱える家庭に対する金銭的負担の軽減という目的も大変重要であると指摘。したがって、健康に対する効果が限定的であったとしても、ただちに制度自体が否定されるわけではないとしている。また、長期的な効果について検討しているわけではなく、医療費助成の是非を考える際には、これらの論点に関するエビデンスを検討し、総合的に判断するべきとの考えも示している。
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・医療経済研究機構 プレスリリース