約2万6000人のうち4%が自覚なく糖尿病発症
国立がん研究センターは1月21日、多目的コホート(JPHC)研究から、歩行時間と糖尿病のリスクとの関連を検討した研究結果を発表した。1日の歩行時間が少ない群において糖尿病のリスクが高いことが示されたとしている。
画像はリリースより
身体活動を上げることが糖尿病発症に対して予防的に働くことはすでに報告されているが、今回は身体活動の中でも「歩行」という多くの人にとって実践しやすい活動に注目。欧米諸国の研究により、歩行が糖尿病のリスクを下げることはすでに報告されているが、アジア人、さらには日本人を対象とした研究ではその関係が十分に明らかにされておらず、研究グループでは、「1日の歩行時間と自覚していない糖尿病発症の関連」の横断的解析を行った。
研究は、1998~2000年度に実施した糖尿病調査に参加した人のうち、自分に糖尿病があることを自覚している人を除外した2万6,488人(調査時平均年齢62歳人、男性36%)を対象に実施。1日の歩行時間を用いて、「30分未満」「30分以上1時間未満」「1時間以上2時間未満」「2時間以上」の群に分けて、本人が認知していない糖尿病(血糖値やヘモグロビンA1c値で定義)を有することとの関連を調査した。対象者のうち1058人(4.0%)が糖尿病を有していた。
1日2時間以上に比べ、30分未満の糖尿病リスク1.23倍
解析の結果、歩行時間が2時間以上の群を「1」とした場合、1時間以上2時間未満が1.04倍、30分以上1時間未満が0.99倍、30分未満が1.23倍で、30分未満の群では糖尿病リスクが高くなることが分かった。
さらに、研究で糖尿病がない人のうち、5年後調査にも参加した人を対象として解析を行ったところ、対象者数1万1,101人(調査時平均年齢62歳、男性33%)のうち、612人が糖尿病を発症。1日の歩行時間が2時間以上の群を「1」とした場合、5年間の糖尿病発症のリスクは、1時間以上2時間未満の群で1.10倍、30分以上1時間未満で1.12倍、30分未満で1.10倍と高かったが、研究グループでは、統計学的に有意ではないと結論付けている。
1日の歩行時間とその後5年間の糖尿病発症とのリスクの関連が見られなかった理由として、対象者数が横断的な解析より少なく統計的検出力が不十分だった可能性があること、縦断的な解析への参加者は、ベースライン調査と5年後調査の両方に参加した人であり、より健康に対する意識が高い対象者であったと推測されることなどが挙げられた。
なお、論文の詳細は2015年12月に「Journal of Epidemiology」にてWeb先行公開されている。
▼関連リンク
・国立がん研究センター 2016 リサーチニュース