従来のトロポニンテストでは6時間要すことも
スイスのF.ホフマン・ラ・ロシュ社は現地時間の1月13日、同社のトロポニンT高感度検査を用いることにより、心臓発作の診断/除外診断のための観察時間を3~6時間から1時間に短縮できることを示したTRAPID-AMI研究の結果を公表した。研究結果は、「Annals of Emergency Medicine」オンライン版に掲載されている。
心臓発作や急性心筋梗塞(AMI)は、心筋領域への血液供給が遮断され、筋肉細胞の壊死を招く一般的な心臓の疾患。30分遅れるごとに、AMI患者の死亡相対リスクが7.5%増加するため、迅速な治療が必須となる。胸痛やAMIを示唆するその他の症状がある患者は、全救急治療室の症例の約10~20%を占めており、米国では43秒ごとに心臓発作が起きているとしている。
トロポニンとは、心臓発作中に血流に放出される心筋たんぱく。これまでの血液検査では、トロポニン放出を検出できるまでの時間が必要という制限があり、従来のトロポニンテストでは、時には6時間を要することもあったという。
迅速な診断、救急治療室の作業負荷にも貢献の可能性
TRAPID-AMI研究は、同社が支援した前向き観察研究で、2011年から2014年の間に、急性の胸痛を有する1,200人以上の患者について調査した。これは、早期の胸痛を有する患者(胸痛発生後6時間以内の患者)について、受診時と1時間後の2回、血液検査を実施する、迅速検査の手順を認証する初めての治験。この新しい診断手順によって、心臓発作の診断時間を3時間以上から1時間に短縮。新たなガイドラインで推奨されている通り、大多数の患者をもっと早期に治療することが可能となることが示唆された。
欧州心臓学会では、2015年8月にロンドンで開催された年次総会で、この時短診断のコンセプトを導入。新しい標準的治療法のガイドラインは、現在TRPID-AMI研究で裏付けられたトロポニンT高感度検査による所要時間1時間という診断手順を支持している。より迅速な決断は、救急治療室の作業負荷とヘルスケアシステムのコストの管理改善にも貢献すると期待される。
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・ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 プレスリリース