高リン血症が生命予後を悪化させる!?
日本透析医学会の発表によると、国内における慢性透析患者数は2014年末時点で約32万人。透析医療の大きな問題のひとつに、医療費の高さが挙げられ、国民1人当たりの総医療費に比べ、末期腎不全(透析期)患者1人当たりの年間医療費は15倍にも上るという調査結果もある。
昭和大学藤が丘病院 腎臓内科准教授 小岩文彦先生
慢性腎臓病患者はミネラル代謝バランスの異常を呈しており、なかでも高リン血症は生命予後と深く関係している。キッセイ薬品工業株式会社は都内にてメディアフォーラムを開催し、昭和大学藤が丘病院 腎臓内科准教授の小岩文彦先生が、ミネラル代謝における腎臓の役割やその病態、リンに着目した治療戦略について講演した。
小岩先生は、慢性腎臓病における高リン血症は心血管疾患を促進し、生命予後の悪化を招くことから「特に透析患者では、リンの管理がミネラル代謝異常のなかで、最優先に管理される事項だ」という。一方で、透析患者のうち約25%の方がリンをコントロールできていないという日本透析医学会調査に触れ、「患者予後の観点から、食事療法では、たんぱく質の摂取量をある程度維持しながら、血清リン濃度を下げる工夫が重要」とし、さらに薬物療法併用の必要性にも言及した。
注目を集める服薬錠数と医療コストとの関係
薬の飲み残し、いわゆる残薬が医療費を押し上げているのではないかという問題がある。総務省調査によると、腎不全患者に処方された薬は、10種類以上が54.5%。「腎臓だけでなく、心血管疾患や糖尿病などを合併していることも多いため、錠数が増える傾向にあり、透析患者では約半数をリン吸着薬が占める」と小岩先生。
そして、薬の錠数が少ないことが服薬アドヒアランスを上げる1つの方法になるのではないかとデータを示し、「リン吸着薬の服薬アドヒアランスが15%改善すると仮定した場合、1か月1,000人あたり約340万円の医療コスト削減になるというデータもある」と紹介。国内では6番目となるリン吸着薬として、2015年11月に発売されたスクロオキシ水酸化鉄は、1日平均3.3錠の服薬で長期間リン管理が可能なことから、「服薬錠数の削減が可能な、新たな高リン血症治療の選択肢となるのでは」と期待を寄せた。
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