脳卒中治療、臨床研究支援体制の均てん化の遅れ見られる
国立循環器病研究センターは1月15日、日本における脳卒中に係る臨床試験の総合的な調整を行うネットワーク「脳卒中臨床試験基盤整備事業『Network for Clinical Stroke Trials』 (NeCST)」の紹介論文が、米国心臓協会・米国脳卒中協会機関誌「Stroke」オンライン版に、米国における同種事業「NIH StrokeNet」の紹介論文と一対で掲載されたと発表した。NeCSTでは、国循脳血管部門の豊田一則部門長と先進医療・治験推進部の山本晴子部長が共同研究代表者を務めている。
画像はリリースより
脳卒中は、国内の要介護者原因疾患の首位を占めるにもかかわらず、治療開発は遅れている。日本では質の高い臨床研究成果を多く発表しているがその多くは小規模で、治療薬などの開発に資する大規模な研究者主導の臨床試験の企画・運営はあまり進んでいない。
その一因に、脳卒中診療を担う国内医療機関への臨床研究支援体制の均てん化の遅れが挙げられる。特に脳卒中発症直後に行われる超急性期医療は、1分1秒を争うほど時間の制約が厳しく、研究者主導での臨床試験運営は困難になりがちとなっている。
これに対し、国循では、強力な中央調整機関を整備し多施設の連携を強化することで、円滑に臨床試験を遂行することが可能になると考え、2015年10月、事業化に向け始動したという。
発症予防、機能回復の試験への応用も計画
豊田部門長らは、脳卒中医学、特に急性期治療を行う国内多施設の研究ネットワークを構築するため、その中央調整機関として国循内関連部署の整備を進め、岩手医科大学超高磁場MRI診断・病態研究部門に中央画像判定部門としての機能整備を委託。同時に、これまでの多施設共同研究参加医療機関を中心に、ネットワークへの参加を呼び掛けている。
米国のNIH StrokeNetとの協力も進み、脳卒中の治療開発に資する日米共同、国際共同の医師主導臨床試験を推進する機運が盛り上がっている。また、韓国では国を挙げてClinical Research Center for Strokeという多施設研究網を構築しており、人種の近い両国間で共同試験を行うことができれば東アジア特有の脳卒中の病態解明、治療開発も進むと期待される。
近い将来には、急性期治療以外に発症予防、機能回復の試験、あるいは脳卒中に関する企業主導試験や患者登録研究、若手医師・医療者教育の標準化への応用なども計画するとしている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース