蛍光相関分光法用いて、神経細胞を死に至らしめる機構調査
北海道大学は1月14日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の神経細胞死機構を解明する研究結果を発表した。この研究は、同大大学院先端生命科学研究院細胞機能科学分野の北村朗助教を中心とした研究グループによるもの。「Scientific Reports」のオンライン版に1月13日付けで掲載されている。
画像はリリースより
ALSは、進行性の神経変性疾患であり、筋肉に指令を与える運動神経細胞が特異的に変性・脱落するといわれている。ALSにおいて、細胞内におけるタンパク質封入体を形成する原因遺伝子産物としては、「TDP43」という核タンパク質があり、ALS患者の運動ニューロン内にあるタンパク質封入体には、このTDP43のカルボキシル末端断片が含まれることが知られている。
そこで、研究グループは、TDP43からそのカルボキシル末端断片を生成した後、細胞内で封入体を形成する過程を可視化することに加えて、一分子感度を持つ蛍光測定技術である「蛍光相関分光法」を用いることで、細胞内における封入体形成とともに神経細胞を死に至らしめる機構を調査した。
RNA分子が新たなALS進行抑制薬となる可能性
その結果、TDP43が切断されると速やかに核から細胞質へ移行することに加えて、TDP43のカルボキシル末端断片のひとつであるTDP25の毒性を持つ凝集体形成がRNAにより抑制されていることを発見した。さらに、このTDP25の凝集体は細胞質において細胞毒性を持つことが示唆された。
この研究成果は、ALSの原因遺伝子産物であるTDP43のRNAを介した凝集体および封入体形成機構を明らかにしたものとなる。これまでタンパク質の凝集体形成は単独に起こるものと考えられてきたが、今回、RNAが積極的に凝集体形成に関わることが示されたことで、凝集体形成と神経細胞死の関係をより詳細に明らかにするための布石となると思われると研究グループは述べている。
また、ALS 原因タンパク質の凝集体形成を抑制するRNAを今後見つけることができれば、細胞内におけるタンパク質凝集体の生理的抑制機構を明らかにできるとともに、当該配列を持つRNA分子が新たなALS進行抑制薬となる可能性が考えられるとしている。
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・北海道大学 プレスリリース