「歩く・座る」の繰り返しを可能に
金型製作を行う町工場の株式会社ニットーは1月13日、千葉大学フロンティア医工学センター、西村拓紀デザイン株式会社、日本高分子技研株式会社と協働で、医療用ウェアラブルチェア「archelis(アルケリス)」を開発したことを発表した。2016年夏頃の製品化を目指して改良試作と評価を進めていくとしている。
画像はリリースより
アルケリスは、長時間の中腰姿勢でも筋肉に負荷を与えずに「歩く・座る」を繰り返すことを可能にし、医療スタッフのパフォーマンスを安定化させる、これまでにない“身につけて歩ける椅子”。
鉗子(かんし)の先端数ミリでの動作が求められる腹腔鏡手術では「体幹の安定」が手術の安定性に大きく影響を及ぼすが、アルケリスによって、術中の安定動作の向上が実現できるほか、医療従事者が抱える特殊な環境での中腰姿勢をサポートできる器具としての可能性もあるとしている。
産学・医工連携の強み生かして製品実現
アルケリスの特徴としては、膝および足首の角度固定と、スネと大腿部の広い面積のサポートで体重を支えることで術中の筋肉疲労を軽減し、安定した長時間の姿勢保持が可能。片足ずつ独立したセパレート設計は、姿勢に合わせてスタンスを自由に取ることができる。パワーアシストスーツなどと異なり、下肢の姿勢保持のみに特化した設計により、手術室での確実な動作と軽量、コードレス化などの運用性の良さも実現した。
さらに、長時間手術での着用者の負担軽減を目的として、「強靭・軽量」という相反する要素を両立させた。耐荷重が集中する構造部には金属パーツを使用し、体重を支える部位は広い面積をカーボンパーツで構成。これらにより、柔軟性があり人体に対してフィットする仕様となっている。
ニットーは、今回の開発で、医療現場でのニーズ抽出・評価、町工場で長年培った加工技術、構成要素を高次元で実体化するデザイン技術、製品機能の医工学的定量評価など、産学・医工の連携チームの強みを生かした技術開発研究と製品実現を達成したとしている。