従来の脳波計、子どもの計測が極めて困難
科学技術振興機構(JST)と大阪大学は1月7日、冷却シートを額に貼るような感覚で、容易に装着することができるパッチ式脳波センサの開発に成功したと発表した。この研究は、JSTと大阪大学産業科学研究所の関谷毅教授、金沢大学こどものこころの発達研究センターの菊知充教授らによるもの。パッチ式脳波センサの技術詳細は、1月13日から3日間、東京ビックサイトにて開催される第2回ウェアラブルEXPOで発表を予定している。
画像はリリースより
研究グループによると、脳マネジメントシステムは、「状態を検知し、活性化手段を提供し、活性化状態を評価し、さらなる活性化につなげる」というサイクルを繰り返すが、状態を検知する手段として脳波を測定することが極めて重要な課題となっている。ところが、従来の医療用脳波計では、頭部全体に複数の電極を有線で装着し、導電ゲルを頭皮に塗布する手法が取られ、ウェアラブルな脳波計でも頭皮に電極を当てる櫛形電極が必要であるなど、装着者への負担が大きく、長時間の装着には耐えられなかった。また、多くのウェアラブルな脳波計は、装着時に、多数のケーブルを伴うことから、例えば、子どもの脳を計測することは極めて困難だった。
そこで、研究グループは、「誰でも」「どのような状態でも」精度の高い脳波計測を行うために、装着者に負担の少ない脳波計の開発を行った。
認知症患者と健常者の脳活動の違いを区別
研究グループは、パッチ式脳波センサの開発により、これまで以上に脳波測定が簡易になることで、多くの脳波データを取得することができ、脳と個人の状態との因果関係を解明する一助になるとしている。
さらに、今回の研究では、アルツハイマー型認知症患者と健常者の脳活動の違いを、額の脳波計測のみで区別できることを突き止めることができ、今後、このパッチ式脳波センサを利用することで、家庭内、かかりつけ医院、介護施設などで認知症の簡易検査などへとつながる可能性がある。
研究グループは、脳マネジメントの方法のひとつとして、将来的には家庭で脳波を測定し、その結果をもとに測定した個人の状態を判断し、個人の状態にあった活性化手段を用いて、個の潜在能力を常に発揮できるシステムの実現を目指していくと述べている。
▼関連リンク
・科学技術振興機構(JST) 共同発表