FH男児患者対象に治験実施
国立循環器病研究センターは1月6日、同センター病態代謝部の斯波真理子部長らの研究グループが、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれるLDL-C値が生まれつき高い遺伝病「家族性高コレステロール血症(FH)」の10~15歳の男児患者に対して、スタチン製剤のひとつであるピタバスタチンの有効性および安全性を検討する治験を行った結果、ピタバスタチンはLDL-C値を有意にかつ安全に低下させることを明らかにしたと発表した。
画像はリリースより
FHは、生まれつきLDL-C値が高値であり、動脈硬化の進行が速く、若くして冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)を起こすリスクが高い遺伝病で、累積LDL-C値がある一定になると、冠動脈疾患を引き起こしてしまうと考えられている。FH患者は、累積LDL-C値が早く上昇し、若い時にこの累積LDL-C値の閾値に到達してしまうため、若い時に正確な診断をして、適切な治療を行うことが求められている。
欧米では、小児期からスタチン治療を開始することがガイドラインで推奨されているが、日本では、いずれのスタチンも、小児に対する保険適応はその有効性と安全性が確認できていないとして、これまで認められていなかった。しかし、今回の研究成果を受けて、ピタバスタチンはスタチン製剤を含む脂質異常症治療薬としては国内で初めて、FHにおける小児用法を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得(2015年6月26日)することにつながった。
52週間内服で、LDL-C値の低下を検討
治験では、多施設ランダム化二重盲検法を用い、10~15歳のFH男児14例に対して、ピタバスタチン(1mg/日あるいは2mg/日)の52週間内服により、LDL-C値が治療前の値に比べてどの程度低下しているか、何%低下しているか検討した。その結果、LDL-C値は、治療前(平均258mg/dL)に比べ、ピタバスタチン1mgでは27.3%、2mgでは34.3%の低下を認め、LDL-C値に加えて、総コレステロール値、non-HDL-C値(総コレステロール値からLDL-C値を引いた値)、アポリポ蛋白B値(脂質異常症治療の目安となる値)につき、全て52週まで低下した状態が続いたとしている。
治験が男児を対象にして行われたのは、当時の動脈硬化性疾患予防ガイドライン(2007年度版)を参考に作成されたことが要因。当時は小児FHに対する薬物治療に対し否定的見解が現在より多かった点、女性が男性と比べて冠動脈疾患発現リスクが低い点、その他スタチン製剤の妊娠に対する影響に配慮が必要であることなども考慮し、女児FH患者については対象としないことが妥当と考えられていた。しかし、その後公表された最新のガイドラインでは、小児への投与承認は女児も対象となっている。
研究成果は、「Journal of Atherosclerosis and Thrombosis」オンライン版に1月6日付けで掲載された。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース