タンパク質「AIM」が腎臓に直接働きかけ、急性腎不全を治癒
日本医療研究開発機構(AMED)は1月5日、これまで全く知られていなかった作用メカニズムにより、血液中のタンパク質AIMが急性腎不全を顕著に治癒せしめることを見出したと発表した。この研究は、東京大学大学院医学系研究科・附属疾患生命工学センター分子病態医科学部門の宮崎徹教授によるもの。
画像はリリースより
今回の研究は、日本医療研究開発機構革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)の研究開発領域「生体恒常性維持・変容・破綻機構のネットワーク的理解に基づく最適医療実現のための技術創出」の一環で行われた。また、同研究成果は、「Nature Medicine」オンライン版に1月4日付けで公開されている。
急性腎不全に対しては、これまで多くの研究がなされてきたが、確実な治療法の確立は果たされていなかった。同研究グループは今回、自ら発見したタンパク質AIMが、直接腎臓に働きかけ急性腎不全を治癒させることを明らかにしたという。
急性腎不全に対する新規かつ効率的な治療法として期待
急性腎不全が生じると、尿細管に “ゴミ”(細胞の死骸)が詰まり、そのことが腎機能の低下を招く引き金となることが知られている。AIMは通常血液中に存在するが、腎臓の機能が低下すると尿中に移行しゴミに付着する。そして付着したAIMが目印となって、周囲の細胞が一斉にゴミを掃除し、迅速に詰まりが解消され、その結果、腎機能は速やかに改善することが明らかとなったとしている。
さらに同研究グループは、AIMを持たないマウスが急性腎不全になると、詰まったゴミは掃除されることなく、腎臓の機能は著しく悪化し続け、多くが死んでしまい、またAIMを正常に持っているマウスでも、重症の急性腎不全を起こすと、体内に持っているAIMの量では十分にゴミが掃除されず、腎臓内の詰まりが解消されないまま、やはり多くが死んでしまうことを明らかにした。そしていずれの場合でも、AIMを静脈注射することで、尿細管の詰まりは劇的に解消され、腎機能が速やかに改善し致死率は著しく低下することを見出した。60~100%であった致死率が、AIM投与により0%となったという。
これらの結果から、血中のAIM量が不十分である場合には、AIMを投与することで急性腎不全を速やかに改善させ、慢性化する危険を回避することが可能であると考えられる。腎機能低下時の血中AIMの尿中への移行およびゴミへの付着は、ヒト急性腎不全患者でも同様に観察されるため、マウスだけでなくヒト急性腎不全患者においても、AIMによる治療は有効であると考えられる。AIMは本来人間の血液中に存在しているものであり、急性腎不全患者にとって安全性の高い治療法となると期待が寄せられている。
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・日本医療研究開発機構 プレスリリース