致死率高く、予後悪い病態として世界的に注目されるAKI
京都大学は2015年12月25日、急性腎障害(AKI)が慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全に移行するメカニズムを解明するとともに、「AKI to CKDモデル動物」を確立した研究結果を発表した。
画像はリリースより
この研究は、同大学医学研究科の柳田素子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「Journal of American Society of Nephrology」のオンライン版で公開されている。
AKIは、数時間から1週間程度の経過で腎臓の機能が低下する病態。従来「治る病気」と考えられてきたが、近年、AKIは致死率が高いのみならず、末期腎不全やCKDに至る予後の悪い病態であることが明らかとなり、世界的に注目を集めている。
近位尿細管障害の強さ・頻度、CKDへの移行に重要
研究グループによると、AKIでは、腎臓の機能単位ネフロンの近位尿細管という部位が障害されるが、CKDでは広範なネフロン障害と線維化、腎性貧血が特徴となっている。AKIがCKDに移行することは疫学的には確立されているものの、AKIの主因である近位尿細管障害が広範なネフロン障害と線維化、腎性貧血を特徴とするCKDを惹起するメカニズムは明らかにされていなかったという。
今回、研究グループは、独自の遺伝子改変動物を作成し、近位尿細管単独の障害がAKIを惹起するとともに、周囲の線維芽細胞の形質転換を惹起し、それに伴う腎性貧血や線維化を引き起こすこと、さらには、糸球体硬化や遠位尿細管障害など、広範なネフロン障害を惹起することを世界ではじめて証明した。また、近位尿細管障害の強さと頻度がCKDへの移行に重要であることも解明。この所見は、AKIの重症度や頻度がCKDへの移行を左右するという疫学結果の理論的根拠となる結果であるとしている。
これらの研究成果は、AKIを適切に治療し、近位尿細管を健康な状態に保つことがCKDや末期腎不全への移行を食い止め、透析導入を遅延させる可能性を強く示唆するとしている。このモデルは「AKI to CKDモデル動物」として創薬の場でも有用性が高いと研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果