封入体筋炎患者と多発筋炎患者を比較
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は12月24日、NCNP神経研究所疾病研究第一部の西野一三部長らの研究グループが、厚生労働省指定難病のひとつである「封入体筋炎」の発症にC型肝炎ウイルス感染が関与するとした研究成果を発表した。
画像はリリースより
封入体筋炎とは、主に50代以上に発症する筋疾患で、手指や下肢の筋力が低下し、発症後平均7年で歩行不能となる。原因は不明で、確立された治療法はないが、近年、国内では封入体筋炎の患者数が増加、2003年時点の有病率は1991年時点の8倍に達したと報告されており、病態解明、治療法開発が急務となっている。
研究グループは、2002~2012年にNCNPで筋病理診断を受けた5099人の患者から、封入体筋炎と診断された患者138人を抽出。その主治医に対してアンケートを行い、症状の経過やC型肝炎ウイルスを含む各種ウイルス感染の有無などを調査した。また、比較対照として、同時期の多発筋炎同齢患者54人にも同様に調査を行った。解析対象となったのは封入体筋炎患者114人、多発筋炎患者44人。
C型肝炎ウイルス感染の有無、進行速度には影響なし
その結果、封入体筋炎患者の28%にC型肝炎ウイルス感染が伴っていたことが分かった。一方、多発筋炎同齢患者の感染率は4.5%、同世代一般人口の感染率は3.4%であり、封入体筋炎患者ではC型肝炎ウイルス感染率が統計学的に有意に高いことが示されたとしている。
また、C型肝炎ウイルス感染の有無は、疾患進行速度や筋病理所見には影響していないことも分かった。C型肝炎ウイルスは筋細胞内には検出されなかったことから、C型肝炎ウイルスは筋肉に直接感染して封入体筋炎を発症させるというより、何らかの免疫学的な異常をきたして発症に関与しているものと推察されるという。
C型肝炎ウイルスは慢性肝炎や肝硬変、肝がんを起こすほかに、肝臓以外の臓器・組織の自己免疫疾患の発症に関わることが知られている。研究成果は、封入体筋炎にそうしたC型肝炎ウイルス関連疾患と共通する発症メカニズムが存在することを示唆しており、今後、病態解明に大きく貢献するものと期待される。
なお、研究成果は米国神経学アカデミー学会誌「Neurology」に12月19日付けで掲載された。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース