■特例点数の総額が消失する規模
塩崎恭久厚生労働相と麻生太郎財務相が21日に行った来年度予算案の閣僚折衝で、2016年度診療報酬改定率を、本体プラス0.49%(国費プラス500億円程度)とすることを決めた。医科0.56%増、歯科0.61%増、調剤0.17%増で、技術料割合に基づく医科:歯科:調剤「1:1.1:0.3」の配分比率は維持した。調剤増は国費ベースで約30億円に相当するが、改定の別枠で実施される「大型門前薬局等の評価の適正化」によって約40億円(国費)が削減されることから、差し引くと調剤全体ではマイナス10億円(国費)と見ることもできる。
大型門前薬局等の適正化で削減される国費ベースの40億円を医療費ベースに換算すると160億円に相当する。年間の処方箋枚数を8億5000万枚とした場合、そのうちの7.6%(6460万枚)の処方箋が調剤基本料において点数が低くなる特例点数(25点)を算定しているとされる。
特例点数は、「処方箋受付回数月4000回超かつ集中率70%以上」と「処方箋受付回数月2500回超かつ集中率90%以上」のいずれかの要件に当てはまる薬局が算定するもの。
7.6%のうち何%の薬局が適正化のターゲットとなる「大型門前」に該当するのかは明らかでないが、仮に7.6%の処方箋全てに網をかけた場合、医療費ベースで160億円に相当し、現在、特例点数を算定している7.6%の調剤基本料が消失してしまう規模の金額になる。
一方、通常改定で薬価(1.22%、国費1200億円)と材料(0.11%、国費100億円)の計1.33%(国費1300億円)引き下げ、ネット(全体)での改定率はマイナス0.84%となった。
今回は、厚労省が「制度改正に伴うもの」との理由から、改定率の計算に入れなかった「別枠扱い」に注目する必要がある。
別枠扱いでは、まず、通常の市場拡大再算定と、年間販売額が極めて大きい品目に対する巨額再算定で480億円、新規後発品の薬価引き下げと、「後発品への置き換えが進まない場合の長期収載品の特例引き下げ」(Z2)の区分見直しによる20億円の計500億円を削減。
大型門前薬局の評価の適正化で40億円、経腸栄養用製品の給付適正化で40億円、湿布薬の1処方当たりの枚数制限と、費用対効果の低下した歯科材料の適正化で計30億円程度の計610億円程度(国費)を捻出した。
今回の改定率は、診療報酬全体(ネット)でマイナス0.84%だが、通常の市場拡大再算定による薬価見直しの影響を加味すると、マイナス1.03%になると厚労省は説明している。これに、別枠扱いによる引き下げ分を加味すると、マイナスの幅は大きくなる。