家族性高コレステロール血症などスタチン抵抗性患者に新たな治療選択肢
心筋梗塞リスクを高める高コレステロール血症の薬物治療は、スタチンを中心に語られてきた。一方で、スタチン抵抗性や不耐性を持つハイリスク患者に治療選択肢はほとんどなかった。その代表例として挙げられるのが、家族性高コレステロール血症(FH)。FHは、LDL受容体関連遺伝子の変異による遺伝性疾患で、遺伝的背景のない高コレステロール血症に比べ、LDL-Cが著しく増加し、動脈硬化の進展が早いといわれている。FHの遺伝子を片方の親から受け継いでいるヘテロ接合体と、両親から受け継いでいるホモ接合体の2種類があり、ヘテロ接合体患者は500人に1人以上、ホモ接合体患者は100万人に1人以上の頻度で認められている(日本動脈硬化学会より)。
帝京大学臨床研究センターの寺本民生先生(左)と
モントリオール臨床医学研究所のNabil G. Seidah先生
FHの治療では、LDL-Cを引き下げることが第一に考えられるが、近年、専門医の間で期待を寄せられているのがPCSK9(前駆タンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)阻害剤だ。肝細胞より分泌され、LDL-Cを血中から取り除く肝臓の働きを低下させるタンパク質で、このPCSK9の阻害がLDL-C値を低下させるための新しい作用機序となる可能性があると考えられている。
アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社は12月18日、「高コレステロール血症治療の変遷とPCSK9の発見」と題したメディアセミナーを開催。講演に立った帝京大学臨床研究センター センター長の寺本民生先生は、高コレステロール血症治療の歴史と変遷、臨床的課題について語った。
「LDL-C値さらに引き下げる治療法を」、PCSK9阻害剤の効果に期待
寺本先生は、「心筋梗塞を起こす最大の原因はFH」としたうえで、その診断率が1%未満と低いことを問題視した。「FH患者は30歳ごろから心筋梗塞を起こす。早い時期に見つけて、治療を開始すべき」(寺本先生)。そうした流れを受け、日本動脈硬化学会は、FHの診断基準を作成。15歳以上のヘテロ型の診断基準として、(1)高LDL-C血症(未治療時のLDL-C180mg/dL以上)、(2)手背、肘、膝などの腱黄色腫、アキレス腱肥厚、あるいは皮膚結節性黄色腫、(3)FHあるいは若年性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)――の3点を挙げた。
FH治療に当たっては、目標となるLDL-C値として、「100mg/dLもしくは治療前の50%未満」を示した。スタチン単剤の薬剤投与に比べ、LDL-値をより強力に下げるには、スタチン+エゼチミブの薬剤投与という考え方もあるが、「さらに強力に下げる治療法が必要」と寺本先生。「PCSK9阻害剤がどれくらいの効果を持つのか注目している」と話した。
このほか、PCSK9を発見したモントリオール臨床医学研究所循環器・代謝疾患研究部門ディレクターのNabil G. Seidah先生の講演も行われ、これまでの研究の経緯や今後の展望が語られた。適切な診断基準がより普及するとともに、さらに効果的な治療法が見出されることが期待される。
▼関連リンク
・日本動脈硬化学会
・アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社