奥氏は1975年に東京大学薬学部製薬学科を卒業後、80年に同大学大学院薬学系研究科博士課程を修了。81年に米国ノースウエスタン大学分子細胞生物学部門の博士研究員、82年には助手となった。83年からは摂南大学薬学部で講師、助教授などを歴任。98年から静岡県立大学薬学部の教授に就任し、現在に至っている。
主な研究分野は、リポソームを用いた薬物送達技術(DDS)の研究で、その中には種々の機能性を有するリポソームの開発や、PETを用いたリポソーム体内動態の解析、脳梗塞治療へのDDS応用などがある。日本生化学会や、日本薬剤学会、日本癌学会などに所属している。
一方、日本薬学会賞には、新井洋由(東京大学大学院薬学系研究科教授)、奥、藤井信孝(京都大学大学院薬学研究科特定教授)、向智里(金沢大学理事副学長)の4氏を選出。
功労賞には15年のノーベル医学生理学賞を受賞した大村智氏(北里大学特別栄誉教授)のほか、内山充(国立医薬品食品衛生研究所名誉所長)、宮田直樹(名古屋市立大学創薬基盤科学研究所副所長特任教授)の両氏を選出した。また、教育賞は吉冨博則氏(福山大学薬学部教授)の「実務実習を中心とした薬剤師養成教育への貢献」、佐藤記念国内賞受賞者は寺田智祐氏(滋賀医科大学病院薬剤部教授・薬剤部長)の「がん薬物療法の個別化・適正化に関する研究」を選んだ。
各賞受賞者とテーマは次の通り。
〈薬学会賞受賞者〉(4件)
新井洋由=生体膜脂質の代謝・機能に関する薬学的研究
奥直人=リポソームDDS技術革新と疾患治療への応用
藤井信孝=ペプチド・蛋白質科学、複素環化学を基盤とする創薬研究
向智里=sp混成炭素を基軸とする新規環構築法の開発と生理活性物質の合成
〈学術貢献賞受賞者〉(3件)
第1A部門:宮田興子(神戸薬科大学教授)=ヘテロ原子の特性を活用した新規合成反応の開発
第2部門:豊岡利正(静岡県立大学薬学部教授)=生体機能性分子の高性能分析法の開発と薬学的応用研究
第3部門:今中常雄(富山大学大学院医学薬学研究部教授)=ペルオキシソームの形成機構と機能ならびに遺伝病に関する研究:ABCトランスポーターを中心に
〈学術振興賞受賞者〉(4件)
第1A部門:山田陽一(理化学研究所環境資源科学研究センター副チームリーダー)=医薬品合成を志向した高活性・高再利用性バッチ・フロー型固定化触媒システムの開発
第1B部門:中川秀彦(名古屋市立大学大学院薬学研究科教授)=ガス状細胞情報伝達分子および類縁体のケージド化合物群の開発と生物応用
第4A部門:平塚真弘(東北大学大学院薬学研究科准教授)=個別化薬物療法を目指したファーマコゲノミクス解析に関する研究
第4B部門:東田千尋(富山大学和漢医薬学総合研究所准教授)=神経変性疾患の新しい治療戦略に関する研究
〈奨励賞受賞者〉(8件)
浅井禎吾(東北大学大学院薬学研究科助教)=エピジェネティック制御を利用した糸状菌未利用遺伝子の活用と多様な天然物の創出
異島優(熊本大学薬学部助教)=血清アルブミンによる一酸化窒素トラフィックシステムの解明と難治性癌治療への展開
大戸梅治(東京大学大学院薬学系研究科講師)=自然免疫系Toll様受容体の構造基盤の解明
小坂田文隆(名古屋大学大学院創薬科学研究科講師)=網膜再生治療に向けた新規幹細胞由来網膜細胞作成法の開発と創薬への応用
神谷真子(東京大学大学院医学系研究科助教)=化学蛍光プローブの精密設計による革新的バイオイメージングツールの創製
塚野千尋(京都大学大学院薬学研究科講師)=パラジウム触媒反応および脱芳香環化を基軸とした複雑な生物活性天然物の全合成
平野圭一(東京大学大学院薬学系研究科助教)=アート錯体化を基盤とするヘテロ原子導入反応の開発:パーフルオロアルキル化、ホウ素化、芳香族水酸化およびアミノ化反応
宮地孝明(岡山大学自然生命科学研究支援センター准教授)=創薬を指向した真核生物トランスポーターの構造と機能に関する研究
〈創薬科学賞受賞者〉(2件)
西田晴行(武田薬品医薬研究本部化学研究所)ほか=新規カリウムイオン競合型アシッドブロッカー ボノプラザンの創製
柴山史朗(小野薬品筑波研究所先端医薬研究部)ほか=抗PD-1抗体ニボルマブ(nivolumab)の研究開発